名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2016年06月


**************** 名歌鑑賞 ****************

 
世の中を 何に譬へん 弥彦に たゆたふ雲の
風のまにまに
               良寛
           
(よのなかを なににたとえん いやひこに たゆたう
 くもの かぜのまにまに)

意味・・この世の中を過ごして行く態度として、何に譬え
    たらよいだろうか。それは、弥彦山に漂う雲が風
    の吹くのに従っているのに譬えたらよい。

    人の言うことは、否定を少なくして肯定する事を
    多くすれば人間関係は良くなる・・・。

 注・・弥彦=新潟県にある弥彦山。
    たゆたふ=漂う。

作者・・良寛=りょうかん。1758~1831。
 
出典・・良寛歌集・495。


*************** 名歌鑑賞 ***************


越え行くも 苦しかりけり 命ありと またとはましや
小夜の中山
                  後深草院二条 

(こえゆくも くるしかりけり いのちありと また
 とわましや さやのなかやま)

意味・・越えて行くのも苦しい小夜の中山です。もし命
    があるとしも、またここに来て越える事がある
    でしようか。あの西行のように、その歌のよう
    に。

    後深草院の寵愛を受けた二条は、また同時に他
    の男性達と関わりをもち、宮廷女性として華や
    かな、しかし悩み多い生活をした。30歳頃宮廷
    を出て尼姿になり、憧れていた旅と歌に生きた
    西行の生活を自らも送り、後にその愛欲と旅の
    半生の記録を「とはずがたり」に綴る。
    旅の途次、小夜の中山に至って、西行の「年た
    けてまた越ゆべしとおもひきや命なりけり小夜
    の中山」を思い出して詠んだ歌です。

 注・・小夜の中山=静岡県掛川市にある坂路。古く東
     海道が通じ、歌枕として有名。

作者・・後深草院二条=ごふかくさいんのにじょう。12
              58~?。幼時より後深草院の許に育つ。恋愛に
    悩み、のち出家し諸国遍歴の旅に出る。半生の
             記録「とはずがたり」。
 
出典・・とはずがたり。

参考歌

年たけて また越ゆべしと おもひきや 命なりけり
小夜の中山
                   西行 

意味・・若かった日、小夜の中山を越えた折、年老いて
    再び越えることがあると思っただろうか。命が
    あるから今越えて行くのである。

    東大寺再建のため、砂金勧進を目的として、藤
    原秀衝(ひでひら)を平泉に訪ねた時の歌。
    「命なりけり」に求道の年月を経て今日に至っ
    た自分の命によせる、激しく、しかもしみじみ
    と深い思いが、よく表現されている。

出典・・新古今・987。


**************** 名歌鑑賞 ****************

 
おろかさを 老いてくやまん 人はあらじ 学びにいらぬ
童なければ
                    裕
               
(おろかさを おいてくやまん ひとはあらじ まなびに
 いらぬ わらわなければ)

意味・・愚かである事を年老いて後悔するような人はある
    まい。学びの道に入らない子供などはいないので。

    明治5年に学制が公布され小学校が設置された。
    この時に詠まれた歌です。

作者・・裕=ゆたか。伝未詳。
 
出典・・明治開花和歌集。


**************** 名歌鑑賞 *****************

 
こんなにも 湯呑み茶碗は あたたかく しどろもどろに
吾はおるなり
                   山崎方代
             
(こんなにも ゆのみちゃわんは あたたかく しどろ
 もどろに われはおるなり)

意味・・湯飲み茶碗の手ざわりというより、茶碗にお茶
    を注いでもらった、その温かさにしどろもどろ
    になっている。

    方代は定職を持たず、家庭を持たず援助者の好
    意で生活をして一生を終えている。孤独の生活
    は、その裏返しの温かさをかみしめる生活の累
    積でもあった。たった一碗のお茶の温かさに心
    が揺れるほど、現実は孤独。自分の人生を振り
    返ればしどろもどろ。この先もしどろもどろ。

作者・・山崎方代=やまさきほうだい。1914~1985。
    尋常高等小学校卒業。
     
出典・・歌集・右左口(うばぐち)(東京堂出版「現代短

    鑑賞事典」)


*************** 名歌鑑賞 **************

 
香具山と 耳成山と 闘ひし時 立ちて見に来し
印南国原
               中大兄皇子
          
(かぐやまと みみなしやまと あいしとき たちて
 みにこし いなみくにはら)

意味・・ああ、ここが、香具山と耳成山とが争った時、
    阿菩大神(あぼのおおかみ)が立って、見に来た
    という印南国原だ。

    大和三山の妻争いの伝説を歌ったもの。大和平
    野には香具山(男山)・畝傍(うねび)山(女山)・
    耳成山(男山)が向い合い、この三山が妻争いを
    したという伝説。阿菩大神が仲裁に来たという。
    神代の時代からこんなふうであり、昔もそうだ
    から、今の世でも妻を求めて争うものだと嘆い
    た歌。

 注・・印南国原=明石から加古川あたりにかけての平
     野。

作者・・中大兄皇子=なかのおおえのおうじ。後の天智
    天皇。
 
出典・・万葉集・14。

このページのトップヘ