名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2016年09月


*************** 名歌鑑賞 ***************

 
さ夜深き 軒ばの嶺に 月は入りて 暗き檜原に
嵐をぞ聞く
                 永福門院

(さよふかき のきばのみねに つきはいりて くらき
 ひばらに あらしをぞきく)

意味・・夜が更けた軒端のあたりから見える山の嶺には
    月が入ってしまって、暗い檜原に嵐の音を聞く
    ばかりだ。

    ほのかな月の光が消えて暗黒の世界。視界は消
    え失せて強風の音のみが聞こえる秋の夜半。そ
    の心細さを詠んでいます。

作者・・永福門院=えいふくもんいん。1271~1342。
    伏見天皇の中宮。

出典・・玉葉和歌集。


************** 名歌鑑賞 *************** 


思ふかた 山はふじのね 年をへて わが身の雪ぞ
ふりまさりゆく     
                 藤原家隆

(おもうかた やまはふじのね としをへて わがみの
 ゆきぞ ふりまさりゆく)

意味・・思い悩むことは富士山のように高く積もり、
    年と共にわが身の雪(白髪)はいよいよよく
    降ることだ。

 注・・おもふかた=思い悩むこと。心配すること。
    わが身の雪=白髪を指す。

作者・・藤原家隆=ふじわらのいえたか。1158~1237。
    新古今時代の中心的な歌人。後鳥羽院の信任
    が厚かった。

出典・・岩波書店「中世和歌集・鎌倉篇」。


**************** 名歌鑑賞 ***************** 

時しもあれ 故郷人は 音もせで 深山の月に 
秋風ぞ吹く
                藤原良経

(ときしもあれ ふるさとびとは おともせで みやまの
 つきに あきかぜぞふく)

詞書・・山家にいて見る秋の月、という題で詠みました歌。

意味・・ちょうどこういう寂しい時、昔なじみの故郷の人
    は訪れても来ないで、深山には月がひっそり照ら
    し、寂しい秋風が吹いている。

 注・・時しもあれ=折も折なのに。ここでは、ちょうど
     こういう寂しい時の意。
    音もせず=便りもない。訪れもない。

作者・・藤原良経=ふじわらのよしつね。1168~1206。
    38歳。従一位摂政太政大臣。新古今の仮名序を
    執筆。

出典・・新古今和歌集・394。


*************** 名歌鑑賞 *************** 


何の木の花とは知らず匂ひかな
                  芭蕉

(なんのきの はなとはしらず においかな)

意味・・何という木だか分からないが、清らかな花の
    匂いがただよって神々しく感じられることだ。

    伊勢神宮に参拝した時の歌で西行の次の歌の
    本歌取りといわれています。
    自然界の働きに畏敬を感じています。

    「何事のおはしますとは知らねどもかたじけ
    なさに涙こぼるる」 (意味は下記参照)

作者・・芭蕉=ばしょう。1644~1694。

出典・・笈の小文。

参考歌です。

何事の おはしますとは 知らねども かたじけなさに
涙こぼるる
                  西行

(なにごとの おわしますとは しらねども かたじけ
 なさに なみだこぼるる)

意味・・どなた様がいらっしるのかよくは分りませんが、
    自分が今日こうして生きていける事が恐れ多く
    て、ただにただに涙が出て止まりません。

    天地自然、万物に神々が宿るという素朴な心を
    詠んでいます。
    日本は温暖な気候に恵まれて自然は豊かです。
    そこに生きる日本人は自然の恵みをいっぱい
    貰って生活をしています。
    時には恐ろしい災害もありますが、その時は
    恐れ慎み、しばらく我慢しておればやがて収
    まります。
    自然は恐ろしい反面、沢山の恵みを与えてく
    れるありがたい存在です。
    自然界の一つ一つの働きに人の及ばない何か
    大きな働きを感じ「ありがたい」「恐れ多い」
    と詠んだ歌です。
    自然界があっての人間です。自然を破壊する
    のでなく、大切にしたいものです。

 注・・かたじけなさ=分に過ぎた恩恵・好意・親切
     を受けたありがたさ。

作者・・西行=さいぎょう。1118~1190。

出典・・宇野精一「平成新選百人一首」。
 


*************** 名歌鑑賞 ***************

 
白露も 夢もこの世も まぼろしも たとへていはば
ひさしかりけり      
                 和泉式部

(しらつゆも ゆめもこのよも まぼろしも たとえて
 いわば ひさしかりけり)

詞書・・ほんの少し通い始めてすぐに来なくなった男性
    に贈った歌。

意味・・(はかないものの例えの)白露も夢もこの世も
    幻も、恋のはかなさになぞらえていうと、こ
    れだって久しいものですよ。

    どんなはかないものでさえ、あなたの関係と
    のあっけなさに比べると、長続きするものに
    思われますと、男性に嘆き訴えた歌です。

 注・・白露も夢もこの世もまぼろしも=短いものの
     例えを列挙。
    たとへて=例える、なぞらえる。ここでは
     恋のはかなさに例えたもの。

作者・・和泉式部=いずみしきぶ。年没年未詳、977年
    頃の生まれ。朱雀天皇皇女昌子内親王に仕える。

出典・・後拾遺和歌集・832。

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