名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2016年11月


***************** 名歌鑑賞 ***************


秋風の 音をも更に 吹きかへて 又おどろかす
冬は来にけり
                後水尾院

(あきかぜの おとをもさらに ふきかえて また
 おどろかす ふゆはきにけり)

意味・・秋の到来を感じさせた秋風の吹き方をもう一度
    改めて、秋に続いて再びはっとさせる冬がやっ
    て来たことだ。

    「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音に
    ぞおどろかれぬる」(古今集・藤原敏行)で秋風
    によって秋の到来を気づかされたことを受け、
    その秋風が更に冬の風に変じて冬の到来を「又」
    感じさせられたというのである。

作者・・後水尾院=ごみずのおいん。1596~1680。
           108代天皇。

出典・・小学館「近世和歌集」。


*************** 名歌鑑賞 **************


山を見よ山に日は照る 海を見よ海に日は照る
いざ唇を君
                 若山牧水

(やまをみよ やまにひはてる、うみをみよ うみに
 ひはてる、いざくちびるをきみ)

意味・・山々の木々は美しく輝いている。海も美しく
    凪いで青々と日に輝いている。私は幸福に満
    ち満ちている。さあ、唇を寄せたまえ君。

作者・・若山牧水=わかやまぼくすい。1885~1928。
        早稲田大学卒。尾上柴舟に師事。旅と酒を愛
    す。

出典・・歌集「別離」(大悟法利雄著「若山牧水の秀歌」)


**************** 名歌鑑賞 ***************

ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれないに 
水くくるとは
                 在原業平

(ちはやぶる かみよもきず たったがわ からくれないに
 みずくくるとは)

意味・・さまざまな不思議なことが起きていたという
    神代でも聞いたことがない。滝田川の水を韓
    紅(からくれない)に絞り染めにするとは。

    真っ赤な紅葉が点々として浮かぶ滝田川を、
    真紅の絞り模様のついた反物を晒(さら)した
    ところに見立てたもので、華麗な歌です。

 注・・ちはやぶる=凶暴な、猛々しい、転じて「神」
     の枕詞。
    神代=不思議なことが起こった神々の時代。
    滝田川=奈良県生駒郡に流れる川。
    からくれない=鮮やかな紅色。韓紅。
    水くくる=水を反物にみたてて、水に浮かんだ
     紅葉の葉をくくり染め(絞り染め)に見立てた
     もの。

作者・・在原業平=ありわらのなりひら。825~880。
    美濃権守。六歌仙の一人。゜伊勢物語」が有名。

出典・・古今和歌集・294、百人一首・17。


**************** 名歌鑑賞 **************


紫の 葡萄を搬ぶ 舟にして 夜を風説の
ごとく発ちゆく
              安永蕗子

(むらさきの ぶどうをはこぶ ふねにして よるを
 ふうせつの ごとくたちゆく)

意味・・一艘の舟が夜の岸を静かに離れてゆく。積み
    荷は紫の葡萄という。香り高く熟した葡萄を
    積んだ舟の出立。夜の水辺をゆく舟のシルエ
    ットが美しい。舟はどこに行くのだろう。風
    のうわさのように・・確かめられないが、静
    かに発って行く。

 注・・搬ぶ=手で移し動かす。持ち運ぶ。

作者・・安永蕗子=やすながふきこ。1920~ 。熊本
    県女子師範卒。書家。

出典・・歌集「魚愁」(実業之日本社「現代秀歌百人
    一首」)


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秋の野に なまめき立てる 女郎花 あなかしがまし
花もひと時
                 僧正遍照 

(あきののに なまめきたてる おみなえし あな
 かしがまし はなもひととき)

意味・・秋の野原に、あでやかな姿を競っている女郎花
    は、まあなんとうるさいことであろうか。美し
    い花も、ほんの一時だけの事なのに。

    女郎花を女性にたとえた歌です。

 注・・なまめき立てる=あでやかな姿を競っている。
    女郎花=花の名前から若い女性をほのめかす。
    あなかしがまし=ああ、やかましい。

作者・・僧正遍照=そうじょうへんじょう。~890年没。
     元慶寺を創設して座主となった。

出典・・古今和歌集・1016。

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