名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2017年01月


*************** 名歌鑑賞 ***************


白玉の 歯にしみとほる 秋の夜の 酒はしづかに
飲むべかりけり
                 若山牧水

(しらたまの はにしみとおる あきのよの さけは
 しづかに のむべかりけり)

意味・・秋の夜を一人静かに酌む酒の味、それは歯に
    しみ通りはらわたにしみわたるような感じが
    して、疲れきった体にも、心にも生気がよみ
    がえって来る。こんな静かな秋の夜の酒は何
    といっても一人静かに飲むに限る。

    秋の夜長、一人静かに酒を飲み、来し方、行
    く末を思い人生を考える。皆で楽しく飲む酒
    もよいが、心を澄まして一人飲む酒はまた格
    別な味がする。

 注・・白玉の=歯の形容で枕詞に近い語。

作者・・若山牧水=わかやまぼくすい。1885~1928。
        早稲田大学卒。尾上柴舟に師事。旅と酒を愛
    す。

出典・・大悟法利雄著「現代短歌鑑賞事典」。


***************  名歌鑑賞 **************


耳に聞き 目に見ることの 一つだに 法の外なる
物やなからむ
                  後水尾院

(みみにきき めにみることの ひとつだに のりの
 ほかなる ものやなからん)

意味・・耳に聞き、目に見ることのうち、一つとして
    仏法の埒外の物はないだろうよ。

    仏教の教えを詠んでいます。世の中の全ては
    因果応報で成り立ち、人間の行為の善悪に応
    じて、それ相応の報いがあるという考えです。

           具体的には 嘘をつけば罰があたる、など。

 注・・法=仏法、仏教。全ての物は因果関係にある
     という教えや無常(全ての物は変化し続ける
     )という教え。

作者・・後水尾院=ごみずおいん。1596~1680。108
    代天皇。

出典・・御着到百首(小学館「近世和歌集」)。


*************** 名歌鑑賞 **************


四十年 ともにすごしし ことごとも 夢みる如く
ここに終りぬ
                  林圭子 

(よんじゅうねん ともにすごしし ことごとも ゆめ
 みるごとく ここにおわりぬ)

詞書・・誕生日。

意味・・かえりみて四十年ともに生活した思い出は、
    夢を見るようにあっけなく過ぎ去って行く。
    彼の誕生日の今日、ともに過ごした事を思
    い出した寂しい日はここに終わった。

    夫が亡くなった翌年の彼の誕生日に、思い
    出を詠んだ歌です。

作者・・林圭子=はやしけいこ。1896~1989。窪田
    空穂の妻。跡見女学校卒。

出典・・歌集「ひくきみどり」(東京堂出版「現代
    短歌鑑賞事典」)


**************** 名歌鑑賞 ***************


ふるさとの蟹の鋏の赤いこと        
                    山頭火
    
(ふるさとの かにのはさみの あかいこと)

意味・・流浪の旅から戻り、故郷に入って先ず目につい
    た蟹だか、この蟹の鋏の何と赤いことだろう。
    何と美しいことだろうか。一味違って見えてく
    る。

    心情のこだわりから故郷を出たものの、久し振
    りに帰って来た故郷はやはり懐かしい。温かく
    感じられる。小川で遊んで取っていた蟹もやさ
    しい目で迎えてくれた。故郷はいいものだ。

作者・・山頭火=さんとうか。種田山頭火。1882~1940。
     母と弟の自殺、家業の酒造業の失敗などの
     不幸が重なり出家。禅僧として行乞流転の
     旅を送る。荻原井泉水の「層雲」に出句活躍。

出典・・金子兜太「放浪行乞・山頭火120句」。


**************** 名歌鑑賞 ****************


みちとほし 腰はふたへに かがまれり つえにすがりてぞ
ここまでもくる
                   源実朝

(みちとおし こしはふたえに かがまれり つえに
 すがりてぞ ここまでもくる)

意味・・ここまでの道が遠く感ぜられました。腰は二重に
    曲がってしまいました。杖にすがってようやくこ
    こにやって来ました。

    老人の立場になって詠んでいます。背後に老人を
    哀れ慈(いつく)しむ気持ちがあります。

    こんな老人にも出来るのに私も出来ない事は無い。

 注・・かがまれり=屈まれり。かがむ、腰が曲がる。

作者・・源実朝=みなもとのさねとも。1192~1219。28歳。
    12歳で征夷大将軍になる。甥の公暁に鶴岡八幡宮
    で暗殺された。

出典・・金槐和歌集・598。

このページのトップヘ