名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2017年02月



**************** 名歌鑑賞 ***************


おもうどち 寒き雨夜も 忘れけれ 宇治栂尾の
品定めして
                 井上文雄

(おもうどち さむきあめよも わすれけれ うじ
 とがのおの しなさだめして)

意味・・茶を好む者同士が、気か付けば、寒い雨夜さえ
    忘れさっているのだ。宇治がおいしいか栂尾が
    おいしいか、茶の味の品評をしあって。

 注・・栂尾=京都市右京区。明恵上人が栂尾にお茶を  
     植栽した。
    宇治=京都の南部に位置する。栂尾のお茶が移
     植され、やがて宇治は茶所になった。

作者・・井上文雄=いのうえふみお。1800~1871。江
      戸の人で田安藩の待医。

出典・・歌集「調鶴集」(松本章男著「京都百人一首」)


***************** 名歌鑑賞 ****************


春の夜は 軒ばの梅を もる月の 光もかおる
心地こそすれ
                藤原俊成

(はるのよは のきばのうめを もるつきの ひかりも
 かおる ここちこそすれ)

意味・・春の夜は、軒端に芳香を放っている梅の、その間
    から漏れて来る月の光までもが薫るような心地が
    することだ。

    優雅な雰囲気を歌っています。

作者・・藤原俊成=ふじわらのとしなり。1114~1204。
    正三位・皇太后宮大夫。千載和歌集を撰進。

出典・・千載和歌集・24。


*************** 名歌鑑賞 **************


梅の花 また来ん春は 咲くらめど 下降ちゆく
我ぞわびしき
                 良寛

(うめのはな またこんはるは さくらめど した
 くだちゆく われぞさびしき)

意味・・梅の花は、またやって来る春には咲くであろ
    うが、盛りが過ぎ心も衰えてゆく私の身は、
    まことにわびしいことだ。

    体力の衰えを感じた老人の嘆きです。嘆くだ
    けでなく、出来る事を精一杯して生きていき
    たいものです。

 注・・下=心、心の中。
    降(くだ)ち=盛りが過ぎる、衰える。

作者・・良寛=りょうかん。1758~1831。

出典・・谷川俊朗著「良寛全歌集」。


*************** 名歌鑑賞 *************


燈火の 明石大門に 入らむ日や 漕ぎ別れなむ
家のあたり見ず    
                柿本人麻呂

(ともしびの あかしおおとに いらんひや こぎ
   わかれなん いえのあたりみず)

意味・・明石の広い海峡に船がさしかかる日には、
    はるか彼方の故郷に別れを告げることに
    なるであろうか。もう家族の住む大和の
    山々を見ることもなく。

    当時、防人たちを初めとする国を追われ
    た人達は、明石海峡を越えてそれぞれの
    地に送られて行った。それで明石は別離
    を象徴する場所となった。

    作者も大和から九州へ下る時の心細さ、
    長い間家族ともう会えない寂しさを詠ん
    でいます。

 注・・燈火=明石の枕詞。
    大門(おおと)=大きな海峡。

 作者・・柿本人麻呂=かきのもとひとまろ。生没未
    詳。奈良遷都(710)頃の人。舎人(とねり・
    官の名称)として草壁皇子、高市皇子に仕え
    た。

出典・・万葉集・254。


***************** 名歌鑑賞 ****************


今日に明けて 昨日に似ぬは みな人の 心に春の
立ちにけらしも
                   紀貫之

(きようにあけて きのうににぬは みなひとの こころに
 はるの たちけらしも)

詞書・・春立つ日詠める。

意味・・今日このように夜が明けて、昨日と違っているよう
    に見えるのは、すべての人の心に春が来たからであ
    るらしいなあ。

    季節の移り変りも、結局は節目節目の気構えによる
    ものだ、という心を大切にした歌となっています。
   
作者・・紀貫之=きのつらゆき。780~945。土佐守。古今集
    仮名序の作者。三十六歌仙の一人。

このページのトップヘ