名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2017年03月


**************** 名歌鑑賞 ****************


かかる夜も はなやかにして 人あらむ 戸の面の草生
雨しづかなり
                   百田宗治 

(かかるよも はなやかにして ひとあらん とのもの
 くさふ あめしずかなり)

意味・・こんな夜も、匂うような華やかさをもって、誇ら
    かに立ち振る舞っていることだろう。その様子が
    目に浮かばれて来る。ふと、我にかえり、一人居
    の部屋から、窓外に目を移すと、灯のわずかに届
    く庭前の若草に、雨がしとしとと音もなく降りか
    かって静かである。

    片思いながら、好きな人を思い浮かべて詠んだ歌
    です。

 注・・かかる夜も=このような夜も。いつもそうである
     が、殊に、自分が一人ぽっちでいる、こんな暗
     い淋しい静かな夜でも。
    はなやかに=作者の目に浮かぶ美しさであり、頭
     の中に描かれた幻影。

作者・・百田宗治=ももたそうじ。1893~1955。詩人、作詞
    家。童謡「どこかで春が」有名。

出典・・歌集「愛の鳥」。


**************** 名歌鑑賞 ***************


花やいかに 春日うららうに 世はなりて 山のかすみに
鳥の声
                   伏見院

(はなやいかに はるひうららに よはなりて やまの
 かすみに とりのこえ)

意味・・世はなべて春の日がうららに照らす春景色と
    なり、山の霞の間からは鳥のさえずりの声が
    のどかに聞こえて来る。ああ、今年の花、梅
    や桜の花はどうであろうか、美しい花を賞で
    たいものだ。

作者・・伏見院=ふしみいん。1265~1317。第92代
      天皇。

出典・・金玉歌合(岩波書店「中世和歌集「鎌倉篇」)


*************** 名歌鑑賞 ***************


春の日に 萌れる柳を 取り持ちて 見れば都の
大路し思ほゆ
                 大伴家持

(はるのひに はれるやなぎを とりもちて みれば
 みやこの おおじしおもおゆ)

意味・・春の日盛りの中に芽吹いている柳、この柳
    の枝を折り取って、しげしげ見ると、あの
    奈良の都大路が偲ばれてならない。

    越前(福井・石川)にいる時に詠んだ歌です。
    奈良の都の街路樹は柳が植えられていた。

作者・・大伴家持=大伴家持。718~785。大伴旅人
    の長男。越中(富山)守。万葉集の編纂を行う。

出典・・万葉集・4142。


**************** 名歌鑑賞 ****************


宿もやど 花もむかしに 匂へども 主なき色は
さびしかりけり
                 僧正尋範 

(やどもやど はなもむかしに におえども ぬしなき
 いろは さびしかりけり)

意味・・宿も昔のままの宿だし、花も昔のまま咲き華や
    いでいるけれども、主人のいない家の桜の色は
    寂しいことだ。

    花を愛でていた作者の師が亡くなり、師の家の
    桜の盛りに寄せて詠んだ懐旧の歌です。

 注・・宿=家屋、住居。
    むかしに=宿の主の生きていた昔のままに。

作者・・僧正尋範=そうじようじんはん。1101~1174。
    興福寺の僧正。

出典・・千載和歌集・1054。


*************** 名歌鑑賞 ****************


もろこしの 青海ばらや てらすらむ 今も三笠の
山のはの月
                  伴蒿蹊

(もろこしの あおうなばらや てらすらん いまも
 みかさの やまのはのつき)

意味・・唐土の青海原を照らしているのであろうか、
    今も仲麻呂の頃と同じく見る事の出来る三笠
    山の稜線から出る月は。

    安倍仲麻呂の「天の原ふりさけ見れば春日な
    る三笠の山にいでし月かも」(古今集)を踏ま
    えて詠んいます。

    遠い昔に遠い唐土で見た月と、今三笠の山に
    出ている月とを、時間的・空間的距離を飛び
    越えて重ねています。

 注・・もろこし=唐土。昔、日本から中国を指して
     呼んだ称。
    三笠の山=奈良の町の東にある山。「三笠」
     に「見る」を掛ける。

作者・・伴蒿蹊=ばんこうけい。1733~1806。商人の
    子。36歳で隠居し文人生活を送る。

出典・・家集「閑田詠草」(小学館「近世和歌集」)

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