名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2017年08月


**************** 名歌鑑賞 ****************


牛の子に ふまるな庭の かたつぶり 角ありとても
身をなたのみそ
                  寂蓮

(うしのこに ふまるなにわの かたつぶり つの
 ありとても みをたのみそ)

意味・・牛の子に踏まれるなよ、庭のかたつぶり。牛と
    同じに角があるからといって,自信を持ちすぎ
    てはいけないよ。

 注・・身をたのみそ=身を頼みにしないように。「な
     ・・そ」でおだやかな制止。

作者・・寂蓮=じゃくれん。1139~1202。新古今和歌集
    の撰者の一人。

出典・・寂蓮法師集。    


**************** 名歌鑑賞 ****************


秋の田の 穂の上に霧らふ 朝霞 何処辺の方に
我が恋ひ止まむ
                岩姫皇后

(あきのたの ほのえにきらう あさかすみ いつえの
 かたに わがこいやまん)

意味・・秋の田の稲穂の上に立ち込める朝霞は、いつか、
    いずこへともなく消え去ってしまいますが、私
    のせつない思いは、いつになったら消えてくれ
    るのかしら。

    夫の愛情が戻るのを待ち続けて来たが叶えられ 
    ない。悔しくて嘆きたくなってくる。

作者・・岩姫皇后=いわのひめのおおきさき。仁徳天皇
    の皇后。

出典・・万葉集・88。


**************** 名歌鑑賞 ***************


ありつつも 君をばまたむ 打ち靡く 我が黒髪に
霜の置くまでに
                  磐姫皇后

(ありつつも きみをまたん うちなびく わが
 くろかみに しものおくまで)

意味・・でも、やはり、このままずっと、あなたを待ち
    続けていましょうか。この長い黒髪に霜の置く
    まで、いつまでも、いつまでも。

    夫の浮気に嫉妬し、気が狂わんばかりに一時は
    なったが、私にも至らない点があったのだろう
    かと反省すると、夫の愛情が戻るまで気長に待
    とうと思う。

 注・・ありつつも=このままでいて、生き続けて。  
    霜の置く=白髪になる比喩。

作者・・磐姫皇后=いわのひめのおおきさき。仁徳天皇
    の皇后。

出典・・万葉集・87。


**************** 名歌鑑賞 ***************


かくばかり 恋ひつつあらずば 高山の 磐根し枕きて
死なましものを
                   磐姫皇后

(かくばかり こいつつあらずば たかやまの いわね
 しまきて しなましものを)

意味・・ああ、この胸をかきむしられるような苦しさ。
    こんな思いをするよりも、いっそ、死んだほ
    うがまし。山深い墓の中に葬られ、岩を枕に
    眠った方が、ずっと楽になるでしょうに。

    夫の仁徳天皇が磐姫皇后に愛情をしめさずに、
    美人の黒比売(くろひめ)と浮気しているのが
    耐えられずに詠んだ歌です。
 
 注・・かくばかり=これほどまでに。
    恋ひつつあらずば=恋い焦がれてなんかおら
     ずに。

作者・・磐姫皇后=いわのひめのおおきさき。仁徳天
    皇の皇后。

出典・・万葉集・86。


**************** 名歌鑑賞 ****************


君が行き 日長くなりぬ 山尋ね 迎へか行かむ
待ちにか待たむ
                磐姫皇后

(きみがゆき けながくなりぬ やまたずね むかえか
 ゆかん まちにかまたん)

意味・・あなたは、いったい、どこにいらしたのかしら。
    私、随分長い間、一人ぽっちで、あなたを待っ
    ています。思い切って、私の方から迎えに行き
    ましょうか。それとも、このまま、じっと待ち
    ましょうか。

    「どこどこに視察に行ってくるぞ」と仁徳天皇。
    実は好きな人に会っているのです。それを知っ
    ている磐姫皇后。

    待ち焦がれる女の煩悶を歌っています。
    夫の浮気を恨み、心は嫉妬にはちきれそう。夫
    を誰よりも愛しているのに、この気持ちを分か
    ってくれない夫。私の方に顔を向けて欲しい。
    煩わしい妻から逃げたく、仁徳天皇は黒比売(く
    ろひめ・浮気相手の女性)を追って行く。

 注・・山尋ね=「尋ね」は原則として男の行為。「尋
     ね」と言ったところに強い苦悶が表れている。
    待ちにか待たむ=「待つ」は普通女の行為。女
     らしくひたすらに待つべきか、というのであ
     る。

作者・・磐姫皇后=いわのひめのおおきさき。仁徳天皇
    の皇后。異常な嫉妬の物語が多い。

出典・・万葉集・85。

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