名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2018年01月


*************** 名歌鑑賞 ***************


草も木も 埋もれ果てて 炭竃の 煙ぞ青き
雪の山本
                徳大寺実淳

(くさもきも うずもれはてて すみがまの けむりぞ
 あおき ゆきのやまもと)

意味・・草も木も白い雪にすっかり埋もれてしまった
    中で、炭竃の煙が一筋山の麓に青く立ち昇っ
    ている。

    白い雪の中に一筋立ち昇る青い煙の光景は、
    静寂感の中に、人の営みの息づきが感じられ
    ます。

 注・・山本=山の麓。

作者・・徳大寺実淳=とくだいじさねあつ。1445~1533。
    従一位太政大臣。

出典・・家集実淳集(笠間書院「室町和歌の招待」)


**************** 名歌鑑賞 ****************


ちちのみの 父いまさずて 五十年に 妻あり子あり
その妻子あり
                  楫取魚彦

(ちちのみの ちちいまさずて いそとせに つまあり
 こあり そのつまこあり)

意味・・父がいらっしらなくなってから五十年、私
    にはご在世中にいなかった妻子ができ、子
    の妻子まで出来ました。

    父は若死にしたが、幸いに自分は妻子を持
    ち、その子も妻子を持って無事に暮らして
    いる、と感謝の気持ちを詠んでいます。

 注・・ちちのみの=「父」の枕詞。

作者・・楫取魚彦=かとりなびこ。1723~1783。
           本性伊能。千葉県楫取群佐原の人で楫取と
    称した。賀茂真淵に和歌を学ぶ。

出典・・楫取魚彦家集(窪田章一郎著和歌鑑賞辞典)。


**************** 名歌鑑賞 ****************


長松が親の名で来る御慶かな
                  志太野波

(ちょうまつが おやのなでくる ぎょけいかな)

意味・・このあいだまで「長松、長松」と呼ばれていた
    小僧が、年季も明けて独立し、親の名を継いで
    何屋何兵衛といったふうな名で年始の挨拶にや
    って来た。

    年齢もまだ若く、祝詞を述べる口上にも板につ
    かないぎこちなさがあろう。そのおかしみを詠
    んでいます。

 注・・長松=江戸時代に商家などの小僧の名として用
     いられた。
    御慶=新年を祝う挨拶の言葉。

作者・・志太野波=しだやば。1663~1740。越後屋(今
    の三越)の番頭。芭蕉に師事。

出典・・小学館「近世俳句俳文集」。


*************** 名歌鑑賞 ***************


奥山に紅葉を分けて鳴く蛍             
                  豊臣秀吉

(おくやまに もみじをわけて なくほたる)

意味・・奥山の紅葉を分けて行くと、蛍が鳴いて
    いるよ。

    秀吉、細川幽斎、連歌師の紹巴と頓知比べ
    の遊びをしている時の句です。さあ、この
    後に句を続けよと秀吉。
    紅葉の時期には蛍はいない、まして蛍が鳴
    くなんてあり得ない、と秀吉に文句を言え
    ば、それこそ首が飛んでしまう。
    この句の本歌は百人一首・古今集の中で、
    猿丸太夫の詠んだ歌、
    「奥山に紅葉踏みわけ鳴く鹿の声聞く時ぞ
    秋は悲しき」です。

    (人里離れた奥山で、散り敷いた紅葉を踏み
    分けて鳴いている鹿の声を聞く時こそ、いよ
    いよ秋は悲しいものと感じられる)

    知恵者も集まり考えて出来たのが、
    「しかとも見えてみねのともしび」
    句を続けると、
    「奥山に 紅葉を分けて 鳴く蛍 しかとも
    見えて みねのともしび」

    (紅葉した山に蛍が鳴いているように見える
    ものだ。灯の点っている峰の所で鳴く鹿は)

作者・・豊臣秀吉=とよとみひでよし。1537~1598。
    本能寺の変の後、明智光秀、柴田勝家を破り、
    徳川家康を臣従させて、全国を統一した。

出典・・「続近世奇人伝」。インターネット「秀吉と愉快
    な仲間」。


***************** 名歌鑑賞 *****************


恋人は 現身後生 よしあしは 分たず知らず 
君こそ頼め
               与謝野晶子 

(こいびとは げんしんごしょう よしあしは わかたず
 しらず きみこそたのめ)

意味・・恋人について、その現在の身が、その将来において
    素晴らしいものであるか、悪いものであるかは判断
    出来ないし、またそれを予知する事も出来ない。
    また、そのような事をしようとするような気持ちを
    抜きにして、私は、一途に君を愛し、頼りにして生
    きて生きたい。

    恋人の運命が悪くなって、自分も一緒に地獄に落ち
    て行くような事になったとしても、一切後悔をしな
    いという覚悟を詠んでいます。

 注・・後生=死後に生まれ変わって行く所、将来。

作者・・与謝野晶子=よさのあきこ。1878~1942。堺女学校
     卒。与謝野鉄幹と結婚。

出典・・新万葉集・巻九。

このページのトップヘ