名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2019年04月


*************** 名歌鑑賞 ****************


誰見よと 花咲けるらむ 白雲の たつ野とはやく 
なりにしものを             
                      詠み人知らず

(たれみよと はなさけるらむ しらくもの たつの
 とはやく なりにしものを)

意味・・いったい誰に見よといって、この花は咲いて
    いるのであろうか。すでに住む人もなくなり、
    白雲のかかるような野原となってしまったの
    に。
    
    荒れ野になってしまった庭を見て昔を偲んで
    詠んだ歌です。
    現在も空き家が多く見られます。

 注・・はやく=早くも、もう、すでに。
    白雲のたつ野=白雲が湧き立つ野原。
    なりにしものを=主語は庭と解釈。 

出典・・古今和歌集・856。



*************** 名歌鑑賞 ****************


かくしつつ いつをかぎりと 白真弓 おきふしすぐす
月日なるらん        
                       兼好法師

(かくしつつ いつをかぎりと しらまゆみ おきふし
 すぐす つきひなるらん)
 
意味・・いつ生命が終わるとも知らないで、このように
    安閑と起きたり寝たりして月日を過ごすのであ
    ろうか。

    やるべき事、やりたい事が特に無く、時間をも
    てあまし、だらだらと無為な時間を過ごす反省
    を詠んでいます。
    
 注・・かぎり=限界、臨終。
    白真弓=檀(まゆみ)の木で作った弓。起き伏し
      の枕詞。「知ら」が掛かる。

作者・・兼好法師=1283~ 1352。「徒然草」が有名。

出典・・岩波書店「兼好法師家集」。


*************** 名歌鑑賞 ****************


願はくは われ春風に 身をなして 憂ある人の
門をとはばや    
                       佐々木信綱

(ねがわくは われはるかぜに みをなして うれい
 あるひとの かどをとわばや)

意味・・願うことには、どうか我が身をかろやかな春
    風と化して、憂いを抱いている人の門べに訪
    れて、その悲しみの気持ちをまぎらわしてあ
    げたいものだ。

    作者の自注に「人の心の深く秘められた憂悶
    を聞けることは、歌道の徳の一つであるとい
    う当時の信念から歌ったものである」とあり
    28歳の時の作です。

作者・・佐々木信綱=ささきのぶつな。1872~1963。
    東京帝大古典科卒。

出典・・歌集「思草」(笠間書院「和歌の解釈と鑑賞辞
    典」)


*************** 名歌鑑賞 ****************


昔とは 遠きをのみは 何かいはん 近き昨日も
けふはむかしを    
                       永福門院

(むかしとは とおきをのみは なにかいわん ちかき
 きのうも きょうはむかしを)

意味・・昔というのは、遠い過去のことだけと、
    どうしていえようか。近い昨日にしても
    今日になってみれば過ぎ去ってしまった
    昔に変りはないのに。

    昨日が積もって遠い昔になる。

    蕪村の句、参考です。

    「遅き日のつもりて遠き昔かな」
           (意味は下記参照)

作者・・永福門院=えいふくもんいん。1271~13
    42。藤原実兼(さねかね・太政大臣)の娘。
    伏見天皇の中宮。

出典・・永福門院百番御歌合(岩波書店「中世和
    歌集・鎌倉篇」)

参考句です。

遅き日の つもりて遠き むかしかな    
                          蕪村

意味・・日の暮れの遅い春の一日、自然と思いは過去に
    向う。昨日もこんな日があり、一昨日もこんな
    日であった。こんな風にして、過去の一日一日
    も過ぎていった。やがて来る残り少ない未来の
    ある一日も、このようにして昔となってゆくの
    だろう。

 注・・つもり=積り、一日一日が積って過去になる。

作者・与謝蕪村=1716~1783。池大雅と共に南宗画の
   大家


*************** 名歌鑑賞 ****************


水の面に 綾織り乱る 春雨や 山の緑を 
なべて染むらん 
                     伊勢

(みずのおもに あやおりみだる はるさめや やまの
 みどりを なべてそむらん)

意味・・池水の表面に美しい模様を織り散らす春雨が、
    山のあの美しい緑をすべて染めだしているの
    であろうか。

    池水の波紋は織物、遠く山一面の緑は染物、
    いずれも春雨の美しい工芸と見立てたもの。

 注・・綾織り=美しい模様を織った織物。
    なべて=一面に、おしなべて、すべて。

作者・・伊勢=いせ。生没未詳、940年ごろ生存。
    大和守藤原継陰の娘。36歌仙の一人。

出典・・新古今和歌集・65。

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