名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2019年05月


*************** 名歌鑑賞 ****************


事足れば 足るにもなれて 何くれも 足るがうちにも
なほなげくかな      
                  源定信

(ことたれば たるにもなれて なにくれも たるが
 うちにも なおなげくなり)

意味・・ある欲望を持ち、それが実現したらいいと思って
    いる。それが実現し慣れてくると当たり前になる。
    実際はそれで満足のはずだがまた次の欲望が出
    てくる。それが実現できないと嘆き悲しむものだ。
   
    欲望があれば向上心が生まれ、努力する。この意
    味の欲望は良い事だ。でも、人の欲望にはきりが
    無いので、ある程度の欲望に満足出来ないと不満
    となる。

 注・・何くれ=なにやかや、あれやこれや。

作者・・源定信=みなもとのさだのぶ。生没年未詳。1102
    年出家。

出典・・山本健治著「三十一文字に学ぶビジネスと人生
    の極意」。


*************** 名歌鑑賞 ****************


花のごと 世の常ならば 過ぐしてし 昔はまたも
かへりきなまし           
                  詠み人知らず

(はなのごと よのつねならば すぐしてし むかしは
 またも かえりきなまし)

意味・・花が毎年咲くように、人の世が変わらず
    常にあるものならば、すでに過ぎ去って
    しまった楽しかった私の過去だって、も
    う一度ぐらい帰って来てくれればいいの
    に。

 注・・世の常ならば=人の世が常住不変ならば。
     散りやすい花を、この歌では毎年咲く
     から常住とみている。
    きなまし=きっと来ようものを。「な」
     は完了の助動詞、「まし」は反実仮想
     の助動詞。

出典・・古今和歌集・98。


*************** 名歌鑑賞 ****************


朝露の 消やすき我が身 他国に 過ぎかてぬかも
親の目を欲り      
                大伴熊擬

(あさつゆの けやすきわがみ ひとくにに すぎかてぬ
 かも おやのめをほり)

意味・・朝露のように消えやすい我が命ではあるが、他国
    では死ぬに死にきれない。ひと目親に会いたくて。

    熊擬は18歳の時、国司官の従者として肥後(熊本)
    から奈良の都に向かった時、病にかかり安芸(広島)
    で亡くなった。
    臨終の時に嘆きの言葉として長歌が詠まれています。
    (長歌は下記参照)

 注・・朝露=「消えやすき」の枕詞。はかなさを示す。
    他国(ひとくに)=異郷。古代人は異郷での死を
     特に辛(つら)いものとした。
    過ぎ=「死ぬ」という事を忌み嫌った語。
    かてぬ=絶えられない。
    欲(ほ)り=願う。

作者・・大伴熊擬=おおとものくまごり。731年没。18歳。
    肥後の国の国司官。

出典・・万葉集・885。
    
長歌の要約です。
「地水火風の四大(しだい)が仮に集まって成った人の身は、
滅びやすく、水の泡のようなはかない人の命はいつまでも
留めることはむずかしい」ということだ。それ故、千年に
一度の聖人も世を去り、百年に一度の賢人も世に留まらない。
まして凡愚下賎(ぼんぐげせん)の者はどうしてこの無常から
逃れる事が出来ようか。ただし、私には老いた両親があり、
ともにあばらやに住んでいる。この私を待ち焦がれて日を過
ごされたならば、きっと心も破れるほどの悲しみを抱かれよ
うし、この私を待ち望んで約束の時に違ったならば、きっと
目もつぶれるほどに涙をながされよう。悲しいことよ我が父
上、痛ましいことよ我が母上。この我が身が死に出の道に旅
立つことは気にしない。ただただ、両親が生きてこの世に苦
しまれることだけが悲しくてならない。今日、長のお別れを
告げてしまったならば、いつの世にお遭いすることが出来よ
うか。


*************** 名歌鑑賞 ****************


いつの日か昔語りに五月闇
                    恵好灯

(いつのひか むかしかたりに さつきやみ)

意味・・梅雨時の闇のように、つらい日々を送っていたと
    しても、いつかは必ず、昔話になって語り合う事
    が出来ます。生き続けましょう。

    参考歌です。
   「ながらへば またこのごろや しのばれむ 憂しと
    見し世ぞ 今は恋しき」    (意味は下記参照)

 注・・五月闇=五月雨(梅雨)の頃、陰鬱でどんよりと暗い
     昼や月の出ない闇夜。

作者・・恵好灯=詳細未詳。

参考歌です。

ながらへば またこのごろや しのばれむ 憂しとみし世ぞ
今は恋しき                  
                    藤原清輔
          
意味・・この先、生きながらえるならば、つらいと感じている
    この頃もまた、懐かしく思い出されることだろうか。
    つらいと思って過ごした昔の日々も、今では恋しく
    思われることだから。

 注・・憂し=つらい、憂鬱。

作者・・藤原清輔=ふじわらのきよすけ。1104~1177。

出典・・新古今和歌集・1843、百人一首・84。


*************** 名歌鑑賞 ****************


常盤なす 岩室は今も ありけれど すみける人ぞ
常なかりける         
                 博通法師

(ときわなす いわやはいまも ありけれど すみける
 ひとぞ つねなかりける)

意味・・常に変わらず岩室は今もあるけれど、ここに
    住んでいた人は替わってしまってもう居ない。

    方丈記、参考です。
    「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もと
    の水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、か
    つ消えかつ結びて、久しくとどまりたる例(
    ためし)なし。世の中にある人と栖(すみか)と、
    またかくのごとし」

  注・・常盤なす=「常盤」は常に変わらない岩、
    「なす」は、・・のように。
    岩室=和歌山県日高郡美浜町にある岩窟。
    常なかり=変わっている。

作者・・博通法師=はくつうほうし。伝未詳。

出典・・万葉集・308。

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