名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2019年06月


*************** 名歌鑑賞 ****************


今ぞ知る 民も願ひや 久方の 空にみづほの
国さかふなり     
               招月正徹
 
(いまぞしる たみもねがいや ひさかたの そらに
 みずほの くにさかふなり)

意味・・今こそ分かった、国民たちの願望も永久に
    満たされるように、日本の国の、いよいよ
    栄えていることが。

    国民の願望が叶えられるところに日本国の
    繁栄があることを詠んでいます。

    民が富むと年貢も増えて国も栄える。年貢
    を取りすぎたり、戦争が多いと民が貧しく
    なり国の繁栄にはならない。

 注・・久かた=「空」の枕詞。永久の願いの意を
     こめる。
    みづほの国=日本国の美称。「みつ」は空
     に「満つ」を掛ける。

作者・・招月正徹=しょうげつしょうてつ。1381~
    1459。招月は雅号。室町中期の歌僧。
 
出典・・正徹詠草(岩波書店「中世和歌集・室町編」) 



************** 名歌鑑賞 ****************


なみならぬ 用事のたんと よせくれば 釣りにゆくまも
あらいそがしや     
                   加保茶元成

意味・・なみなみならぬ大事な用事が、波のようにあとから
    あとから沢山寄せて来るので、釣りに行く暇もない。
    まあなんと忙しい事なのだろう。

    忙しくて好きな釣りにも行けない、という事を詠んだ
    ものですが、「釣り」に「波」の縁語仕立てた面白さ
    がネライです。

 注・・なみならぬ=普通ではないと「波」を掛ける。
    あらいそがしや=波の縁語の「荒磯」を掛けている。

作者・・加保茶元成=かぼちゃもとなり。1754~1828。江戸
    時代の狂歌作者。

出典・・小学館「日本古典文学全集・狂歌」。



*************** 名歌鑑賞 ****************

友ほしく 何おもひけむ 歌といひ 書という友
ある我にして
                 橘曙覧

(ともほしく なにおもいけん うたといい ふみ
 というとも あるわれにして)

意味・・寂しくなり、どうして友達が欲しいと思った
    のだろう。私には、歌詠みとか本という友達
    がありながら。

    悩みを聞いてくれる友、喜びを分かち合える
    友、それは本であり歌を詠むことである。

 注・・何おもひけん=どうして思ったのだろう。
    にして=・・でありながら。

作者・・橘曙覧=たちばなあけみ。1812~1868。越前
    国福井(今の福井市)の紙商の長男。家業を異母
    弟に譲って隠棲。歌集「志濃夫廼舎」。

出典・・岩波文庫「橘曙覧全歌集」。



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伊勢島や 潮干の潟に あさりても いふかいなきは
我が身なりけり
                 六条御息所
                 
(いせしまや しおひのかたに あさりても いうかい
 なきは わがみなりけり)

意味・・伊勢の海水の引いた干潟で食べ物を得ようとしも
    何の貝もない、そのように今更何を言っても何の
    甲斐がないのは、私の身です。

    光源氏との不毛の愛を詠んでいます。

 注・・伊勢島=伊勢と同じ。
    あさり=漁り。魚介や海藻を採集する。
    かい=「甲斐」と「貝」を掛ける。
    いふかいなきは=取り立てて言うだけの価値が
     ない。

作者・・六条御息所=ろくじょうみやすんどころ。源氏
    物語の登場人物。

出典・・源氏物語・須磨の巻。


*************** 名歌鑑賞 ****************


むさし野を 霧の晴れまに 見わたせば ゆく末とほき
心ちこそすれ
                   平兼盛
             
(むさしのを きりのはれまに みわたせばゆくすえ
 とおき ここちこそすれ)

詞書・・屏風に武蔵の国の絵を描いてありましたのを
    詠んだ歌。

意味・・武蔵野を霧の晴れ間にずっとながめ渡すと、
    野がはるばると続いて、行く末の遠い心地が
    します。あなた様もこの絵のように、行く末
    長くご長命なさることと存じます。

    藤原兼家の60歳の賀で詠んだ歌です。

 注・・むさし野=武蔵の国一体に広がる平野。今の
     関東平野の一部。

作者・・平兼盛=たいらのかねもり。~990。駿河守。
    三十六歌仙の一人。

出典・・後拾遺和歌集・427。

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