名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2020年03月


 遠近の 鶯の音も のどかにて 花の咲き添ふ
宿の夕暮れ
               永福門院 
         
(おちこちの うぐいすのねも のどかにて はなの
 さきそう やどのゆうぐれ)

意味・・鶯の鳴き声も増えてきて、あちらこちらから、
    のどかな鳴き声が聞こえて来る。家のあたり
    は花もいろいろ咲き始めて、この春の夕暮れ
    は気持ちのいいものだ。

    「花の咲き添ふ」は、何かの花の咲いている
    所に、他の花も咲いて、花が増えていく様子。
    桜に続き、山吹、そして山つつじというふう
    に。
作者・・永福門院=えいふくもんいん。1271~1342。
     伏見天皇の中宮(后と同じ意)。

出典・・永福門院百番御自歌合(岩波書店「中世和歌集・
    鎌倉篇」)


 年ごとに かはらぬものは 春霞 たったの山の
けしきなりけり
                藤原顕輔
            
(としごとに かわらぬものは はるがすみ たったの
 やまの けしきなりけり)

意味・・いつの年も変らない風情は、春霞が立つこの頃
    の滝田の山の姿である。

 注・・たったの山=「立つ」と「滝田の山」を掛ける。

作者・・藤原顕輔=ふじわらのあきすけ。1090~1155。
    正三位左京の大夫。「詞歌和歌集」の撰者。

出典・・金葉和歌集・10。


 山高み 雲井に見ゆる 桜花 心のゆきて 
折らぬ日ぞなき
              凡河内躬恒
           
(やまたかみ くもいにみゆる さくらばな こころの
 ゆきて おらぬひぞなき)

意味・・山が高いので、大空はるかに見える桜の花は、
    実際に手折ることは出来ないが、気持だけは
    そこまで行って折り取らない日はない。

 注・・雲井=雲のある所、空。
    折らぬ日ぞなき=当時の人は花や紅葉を折って
     家に持ち帰ったり、人に贈る習慣があった。
     
作者・・凡河内躬恒=おおしこうちのみつね。900年前
    後に活躍した人。「古今和歌集」の撰者。

出典・・古今和歌集・358。

最上川 瀬々の岩波 せきとめよ よらでぞ通る 
白糸の滝
                詠み人知らず

(もがみがわ せぜのいわなみ せきとめよ よらでぞ
 とおる しらいとのたき)

意味・・最上川よ、瀬々の岩波をせきとめてくれまいか。
    流れの速さに、いま、私はあの白糸の滝へは寄
    らないで通っていますよ。せっかく白糸を撚(よ)
    るような、滝だったのに。

    川下りをしている時に白糸のような滝を見つけ
    て詠んだ歌です。

 注・・瀬々=多くの瀬、あの瀬この瀬。瀬は流れの急
     な所。
 
出典・・義経記。

 


 つくづくと 春のながめの 寂しきは しのぶに伝ふ
軒の玉水
                  大僧正行慶
         
(つくづくと はるのながめの さびしきは しのぶに
 つたう のきのたまみず)

意味・・ぼんやりと物思いにふけりながら春の長雨の降る
    外を見ていると、軒端に生えた忍ぶ草の葉末を伝
    わる雨の雫が玉となってしたたり落ちている。
    この寂しさよ。

    昔を思わせる忍ぶ草に伝わる玉水は、出来ては消
    えて、見ていて寂しくまた美しい。
    
 注・・つくづくと=しんみり、しみじみ、ぼんやりと。
    ながめ=「長雨」と「眺め」を掛ける。「眺め」
     は物思いにふけりながりぼんやりと見ること。
    しのぶ=忍ぶ草。シダの一種。「偲ぶ」を掛ける。
    軒の玉水=軒端に生えた忍ぶ草に伝わる玉になっ
     た雫。

作者・・大僧正行慶=だいそうじょうぎょうけい。1103~
    1165。白河天皇の皇子。大僧正。

出典・・新古今和歌集・64。

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