名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2020年04月


 窓近く 吾友とみる くれ竹に 色そえて鳴く
鶯の声
               後西天皇

(まどちかく わがともとみる くれたけに いろそえて
 なく うぐいすのこえ)

意味・・窓近くに生えて、我が友として見ている呉竹。
    その呉竹の色に音色という色をそえて、鶯が
    鳴いている。

    青々として真っ直ぐに伸びる呉竹は私の好み
    であり、見ていて心地がよい。その上に鶯が
    来て鳴いている。何と佳き日なんだろう。

    宮廷歌人の稽古会の歌です。この歌に対して
    後水尾院は次のように批評しています。
    悪くはないけれども、普通の内容である。少
    し変わった趣向だけれど大したことはない。

作者・・後西天皇=ごさいてんのう。1637~1689。
    111代天皇。

出典・・万治御点(小学館「近世和歌集」)


 百千鳥 さえづる空は 変らねど 我が身の春は
改まりつつ
                後鳥羽院
                
(ももちどり さえずるそらは かわらねど わがみの
 はるは あらたまりつつ)

意味・・いろいろな小鳥がさえずる空はなんの変わりも
    ないが、我が身に訪れる春は、今までと大きく
    相違してしまった・・・。

    隠岐に流されて詠んだ歌です。

 注・・改まりつつ=新しく変わっている。

作者・・後鳥羽院=ごとばいん。1180~1239。第82
    代天皇。承久の乱(1221)によって隠岐に流され
    た。「新古今和歌集」の撰集を命じる。

出典・・遠島御百首(岩波書店「中世和歌集・鎌倉篇」) 


露と落ち 露と消えにし わが身かな なにはのことも
夢のまた夢                
                  豊臣秀吉
            
(つゆとおち つゆときえにし わがみかな なにわの
 ことも ゆめのまたゆめ)

意味・・露のようにこの世に身を置き、露のように
    この世から消えてしまうわが身であること
    よ。何事も、あの難波のことも、すべて夢
    の中の夢であった。

    死の近いのを感じた折に詠んだもので結果
    的には辞世の歌となっています。
   
 注・・なにはのこと=難波における秀吉の事業、
     またその栄華の意と「何は(さまざま)
     のこと」を掛けています。

作者・・豊臣秀吉=とよとみひでよし。1536~1598。
    木下藤吉朗と称し織田信長に仕える。信長
    の死後明智光秀討ち天下を統一する。難波
    に大阪城を築く。

出典・・詠草(福武書店「名歌名句鑑賞辞典」)

 


 春なれば 愉しむごとし 野に土手に 人は草摘む
糧となる草
                  中村正爾 

(はるなれば たのしむごとし のにどてに ひとは
 くさつむ かてとなるくさ)

詞書・・大いなる飢え。

意味・・野原や土手には青草が萌え出ている。そこには
    人々は三々五々草摘みをしている。いかにも春
    の草摘みを楽しんでいる風景なのだが、人々の
    摘んでいる草は今日の食糧にしなければならな
    い草なのである。

    昭和21年の作です。国民一人残らず飢渇(きか
    つ)感に耐えていた時代であり、食べられる草
    なら少しでも多く摘み取って持ち帰りたいと、
    生きるために真剣になっている気持ちを詠んで
    います。

作者・・中村正爾=なかむらしょうじ。1897~1964。
    新潟師範卒。北原白秋に師事。


 みすずかる 信濃の駒は 鈴蘭の 花咲く牧に
放たれにけり
                北原白秋 

(みすずかる しなののこまは すずらんの はなさく
 まきに はなたれにけり)

意味・・ああ信州(長野県)の馬が、鈴蘭の花咲く牧場
    に放たれている。

    牧場の風景です。みずみずしい牧場の草原で
    馬が数頭草を食んでいる。柵の近くには鈴蘭
    の花も咲いている。広い牧場を眺めていると
    気持ちが清々しくなってくる。

 注・・みすずかる=水篶かる。信濃の枕詞。みすず
     の「み」は接頭語で「篶」は篠竹の一種で
     直径は1センチ、長さ2メートルほど。色は
     紫色を帯びてみずみすしさを感じさせる。

作者・・北原白秋=きたはらはくしゅう。1885~1942。
     詩人。

出典・・歌集「海阪」。

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