天つ風 吹飯の浦に いる鶴の などか雲居に
帰らざるべき
藤原清正
(あまつかぜ ふけいのうらに いるたずの などか
くもいに かえらざるべき)
詞書・・殿上を離れまして詠みました歌。
意味・・天の風の吹く吹飯の浦に下りている鶴が、
空に舞い戻るように、どうしてもう一度
昇殿せずにすまそうか。きっと宮中の殿
上に帰る事が許されるであろう。
注・・天つ風=空を吹く風。
吹飯の浦=紀伊の国(和歌山)にある名所
の海岸。
雲居=高い空。「宮中」の意の「雲居」を
掛ける。
殿上=清涼殿の殿上の間に上る事を許さ
れる事。四位・五位になると許される。
作者・・藤原清正=ふじわらのきよただ。~958。
「きよまさ」とも読む。紀伊守・従五位上。
三十六歌仙の一人。
出典・・新古今和歌集・1723。