名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2020年07月


ジャージーの 汗滲む ボール横抱きに 吾駆けぬけよ
吾の男よ
                   佐々木幸綱

(ジャージーの あせにじむ ボールよこだきに われ
 かけぬけよ われのおとこよ)

意味・・ジャージーを汗でぐしょ濡れにして燃え上って
    いる男なんだ。それで何としてでも、ラグビー
    のボールを横抱きにしながら、この場を駆け抜
    けるのだ。男らしい男の見せ場として。
    
    ラグビーの試合でボールをしっかり持ちながら、
    相手のタックルを外しながら懸命に疾走してい
    る状態です。

作者・・佐々木幸綱=ささきゆきつな。1938~ 。早稲
    田大学卒。早稲田大学教授。

出典・・群黎(ぐんれい)(岩田正著「短歌のたのしさ」) 


 青草に よこたはりいて あめつちに ひとりなるものの
自由をおもふ
                  若山牧水

(あおくさに よこたわりて あめつちに ひとり
 なるものの じゆうをおもう)

意味・・自分は今、青い草原に横たわっている。空は
    青く美しく晴れ、雲は白く、吹いて来る風も
    まことに清々しい。自分は一人なのだ、全く
    一人なのだ。この広い天地に生きていて、何
    をしょうと、誰からの束縛も干渉もされる事
    はない。ほんとうに自由な自分なのだ。

    結婚すると妻や子供に束縛されて自由も拘束
    される。が、今は自由だ。自由であるが孤独
    感があり寂しさもあるものだ。

作者・・若山牧水=わかやまぼくすい。1885~
    1928。 早稲田大学卒。尾上柴舟に師事。
    旅と酒を愛す。

出典・・歌集「別離」(大悟法利雄著「若山牧水
    の秀歌」)


 おのづから 我をたづぬる 人もあらば 野中の松よ
みきとかたるな
                   源実朝

(おのずから われをたずぬる ひともあらば のなかの
 まつよ みきとかたるな)

詞書・・屏風絵に、野の中に松の三本生えている所を、衣
    を被った女が一人通ったのを詠んだ歌。

意味・・もしも私のことを尋ねる人がいたら、野中の三木
    (みき)の松よ、私を見たと告げないでおくれよ。

    屏風絵の中の女の口上として詠んでいます。

 注・・おのずから=たまたま、まれに。
    みき=「見き」と松の三本「三木」を掛ける。
    衣(きぬ)を被った=昔、女性が外出する折、単(ひ
     とえ)の小袖を頭から被り、顔を隠すようにした
     姿。
    
作者・・源実朝=みなもとのさねとも。1192~1219。28
    歳。12歳で征夷大将軍になる。甥の公卿に鶴岡八
    幡宮で暗殺された。

出典・・金槐和歌集・591。

ころころと 小石流るる 谷川の かじかなくなり 
落合の滝
                建礼門院

(ころころと こいしながるる たにがわの かじかなくなり
 おちあいのたき)

意味・・ころころと小石が転げるようなせせらぎが聞こえる
    谷川は落合の滝となって流れている。この滝では河
    鹿が美しい声で鳴いていて清々しさが誘われる。

 注・・かじか=河鹿。蛙の一種。谷川に棲み美しい声で鳴
     く。
    落合の滝=京都市左京区大原の草生川にあり、寂光
     院につながる道路にある小さな滝。

作者・・建礼門院=けんれいもんいん。1155~1213。高倉
    天皇の中宮。父は平清盛。1185年平家が壇ノ浦の
    合戦で敗れると、入水したが助けられ、その後大原
    の寂光院で尼となる。

 


 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに
月やどるらむ      
                  清原深養父

(なつのよは まだよいながら あけぬるを くもの
 いずこに つきやどるらん)

意味・・今夜はまだ宵の口だと思っていたら
    そのまま空が明るくなってしまったが
    これでは月が西に沈む暇があるまい。
    進退窮まった月は、どの雲に宿を借り
    ているのだろうか。

    暮れたと思うとすぐに明るくなる夏
    の夜の短い事を誇張したものです。

 注・・宵=夜に入って間もないころ。

作者・・清原深養父=きよはらのふかやぶ。
    九世紀末が十世紀前半の人。清少納言
    の曾祖父。

出典・・古今和歌集・166、百人一首・36。

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