更けにけり 山の端近く 月冴えて 十市の里に
衣打つ声
式子内親王
(ふけにけり やまのはちかく つきさえて とおちの
さとに ころもうつこえ)
意味・・夜が更けてしまったことだ。山の端近くに月の光が
冷たく澄み、遠い十市の里で衣を打つ音が聞こえる。
山の端の冴えた月の光と、遥かな十市の里の砧(き
ぬた)の音とで、夜更けに気がついた。その情景(砧
を打つ女性の夜なべ作業)にしみじみした思いと哀
感を詠んでいます。
注・・山の端=山の上部で空と接する部分。
十市(とおち)=奈良県橿原(かしはら)にある十市町。
「遠・とお」を掛けている。
衣打つ=衣を柔らかくしたり光沢を出すため、木槌
で布を打つ(砧・きぬた)のこと。女性の夜なべ作業
であった。
作者・・式子内親王=しょくしないしんのう。1201年没。後
白河上皇の第二皇女。高倉宮斎宮。
出典・・新古今和歌集・485。