年の一夜 王子の狐 見にゆかん
山口素堂
(としのひとよ おうじのきつね みにゆかん)
意味・・大晦日の夜ともなれば、世間の人達はなにかと
多忙をきわめている。しかし隠者の身には格別
あらたまった用もない。王子の狐でも見にでか
けようか。
素堂は儒学を学び和歌・書道・茶道・能などに
素養があり、官職を務めていたが辞めて隠棲し
た。多芸に遊ぶ高踏の隠士であった。
俗心とは関わらない風狂の心を詠ん句です。
注・・年の一夜=大晦日の夜。
王子の狐=東京都北区にあり、王子稲荷がある。
関八州の稲荷の棟梁とされ、大晦日の日に八
州の狐が集まり、おびただしい狐火が見える
という。この火によって豊作の吉凶が占われ
た。
高踏=俗世間を抜けて上品に構えること。
隠士=俗世間を捨てて、静かな所に隠れ住んで
いる人、また、そういう生活態度の人。隠者。
風狂=風雅を強く求めること。
作者・・山口素堂=やまぐちそどう。1642~1716。芭
蕉と交流。
出典・・小学館「近世俳句俳文集」。