君を思ひ おきつの浜に 鳴く鶴の たづねくればぞ
ありとだに聞く
藤原忠房
(きみをおもい おきつのはまに なくたづの たずね
くればぞ ありとだにきく)
意味・・鶴が君を思い続け興津の浜で鳴いている。私が
君の健在な事だけでも聞くことが出来たのは、
君を思い訪ねて来たからだ。
紀貫之が和泉の国にいる時、忠房がこの地を訪
れた時に贈った歌で、直接面会したのではなく、
健在という噂だけを聞いて贈ったものです。鶴
は忠房自身です。
私はあなたの事を心配して、このように訪ねて
来たからこそ、あなたがつつがなくいる事を聞
いたのです。安心しました。
注・・思ひおきつ=思い置く、心中にたえず思うこと、
心配する。興津(今の大阪府泉大津市)を掛け
る。
あり=この世に生きていること。無事である。
だに=最小限の希望が叶えられた意。
作者・・藤原忠房=ふじわらのただふさ。925年没。山
城守。
出典・・古今和歌集・914。