石ばしる 垂水の上の さ蕨の 萌え出づる春に
なりにけるかも
志貴皇子
(いわばしる たるみのうえの さわらびの もえいずる
はるに なりけるかも)
意味・・水が激しく岩にぶつかり落ちる滝のほとりの蕨
が今こそ芽吹く春になったことだなあ。
雪どけのために水かさが増した滝のほとりに、
芽吹いたワラビを見つけたことを、長い間待ち
焦がれた春の訪れとして受け取り、率直な喜び
を歌っています。
詞書では「歓びの歌一首」とあり、これは何か
の喜びを抽象的に歌ったものです。
大きな仕事を成し遂げた時の晴れ晴れとした気
持が感じさせられます。
注・・垂水の上=滝のほとり、垂水はたれ落ちる水の
こと。
作者・・志貴皇子=しきのみこ。~715。天智天皇の子。
出典・・万葉集・1418。