津の国の 難波の春は 夢なれや 葦の枯葉に
風渡るなり           
                西行

(つのくにの なにわのはるは ゆめなれや あしの
 かれはに かぜわたるなり)

意味・・津の国の難波のあの美しい春景色は
    夢だったのであろうか。今はただ、
    葦の枯葉に風が渡ってゆくばかりで
    ある。

    能因法師の「心あらん人にみせばや
    津の国の難波あたりの春のけしきを」
    を本歌としています。           
              (意味は下記参照) 
  
 注・・津の国の難波=摂津の国の難波の浦。
     今の大阪市。
    夢なれや=夢であったのか。

作者・・西行=さいぎょう。1118~1190。
    新古今集には一番入選歌が多い。
 
出典・・新古今和歌集・625。

本歌です。
心あらむ 人にみせばや 津の国の 難波あたりの
春の景色を              
                 能因法師
(こころあらむ ひとにみせばや つのくにの なにわ
 あたりの はるのけしきを)

意味・・情趣を理解するような人に見せたいものだ。
    この津の国の難波あたりの素晴しい春の景色を。
    心あらん(好きな)人の来訪を間接的に促した歌です。
 
作者・・能因法師=のういんほうし。988~?。1014年頃
    出家。中古三十六歌仙の一人。

出典・・後拾遺和歌集・43。