田子の浦ゆ うち出でて 見れば真白にぞ 富士の高嶺に
雪は降りける                
                    山部赤人
             
(たごのうらゆ うちいでて みればましろにぞ ふじの
 たかねに ゆきはふりける)

意味・・田子の浦を通って眺望のきく所へ出て見ると、
    真っ白に富士の高い峰に雪が降り積っている
    ことだ。

    作者の位置を明らかにしつつ、富士の景観を
    嘆美したものです。簡潔でよく形も整い、声
    調も張り満ちた歌になっています。

    「新古今集・675、百人一首・4」では、
    「田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士の
    高嶺に 雪は降りつつ」と収められています。

 注・・田子の浦=駿河国(するが・静岡県)の海岸。
    白妙(しろたえ)=こうぞの木の繊維で織った布
     のように真っ白い状態をいう。富士の枕詞。
 
作者・・山部赤人=やまべのあかひと。生没年未詳。
    奈良時代の初期から中期の宮廷歌人。
 
出典・・万葉集・318。