淡海の海 夕浪千鳥 汝が鳴けば 情もしのに
古思ほゆ
                柿本人麻呂

(おうみのみ ゆうなみちどり ながなけば こころも
 しのに いにしえおもほゆ)

意味・・近江の湖の夕べの波の上を飛ぶ千鳥よ、お前が
     鳴くと、心もしおれて昔のことが(繁栄していた
     頃の都が)思われることだ。

    壬申の乱後、荒れた近江の都を過ぎる時に詠んだ
    歌です。

 注 ・・淡海の海=近江の海、すなわち琵琶湖のこと。
    情(こころ)もしのに=心もしおれなびくように。
    古思ほゆ=昔のことが思われる。「古」は、今は
     廃墟と化したこの地に、壮麗な大津の宮があっ
     た時代をさしている。

作者・・柿本人麻呂=かきのもとのひとまろ。生没年未詳。

出典・・万葉集・266。