書かざりし日のあざやかに日記果つ
                    田口紅子

(かかざりし ひのあざやかに にっきはてつ)

意味・・日記が一冊終わりました。振り返ってページを
    繰っていると、白紙の日が幾日かあります。書
    けない事があったわけではありません。書かな
    かったのです。日記に残さなくても決して忘れ
    ることのない一日です。
 
      書かなかった事の一例。
    今日の出来事は一生忘れられない。日記に書か
    なくても忘れたくても忘れられない。
    生まれて一ヶ月の乳児の検診に行って診て貰う
    と、医者からむごい事を言われた。「赤ちゃん
    の耳は聞こえてないですね」。「本当ですか、
    間違いじやないですか」「いや、本当に聞こえ
    ていません」「治りますか」「治らないでしょ
    う」。
    どうしたらいいのだろう。一晩中泣き明かして
    も気が治まらない。

作者・・田口紅子=たぐちべにこ。1948~ 。鷹羽狩
    行に師事。1981年毎日歌壇嘗受賞。

出典・・メールマガジン・黛じゅん『愛の歳時記』