今日よりは 顧みなくて 大君の 醜の御楯と
出で立つわれは
                火長今奉部与曾布 
            
(きょうよりは かえりみなくて おおきみの しこの
 みたてと いでたつわれは)

意味・・今日からは家をも身をも顧みすることなく、大君
    の強い御楯となって、私は出立するのである。

    防人の歌です。大友家持に兵役の心構えを聞かれ
    て詠んだ歌です。
    火長というのは十人の兵士の長(兵士五人をもって
    一伍とし、二伍をもって一火とした)。部下をまと
    めて一心に任務に励む頼もしい兵士であろう。

    この歌の思想は、長くわが国の軍国主義精神、愛
    国心として国により推奨された。

 注・・顧みなく=一身上のことを考慮しない。
    醜(しこ)=頑強なこと。
    御楯=戦場で立てて敵の矢などを防ぐ武具。「御」
     は敬意の接頭語。

作者・・火長今奉部与曾布=かちょういままつりべのよそふ。
     生没年未詳。防人。

出典・・万葉集・4373。