多摩川に さらす手作り さらさらに 何そこの児の 
ここだ愛しき             
                  詠人知らず

(たまがわに さらすてづくり さらさらに なにそこの
 この ここだかなしき)

意味・・多摩川に晒(さら)す手作りの布のように、さらに
    さらに、どうしてこの子がこんなにもいとしくて
    ならないのだろう。

    川に布を晒すのは、柔らかく美しくするためです。
    多摩川流域は麻の栽培が盛んであった。
    律令時代に税の一つに「調」があり、麻布が収め
    られていた。東京の「調布」や「麻布」の地名は
    その名残りです。

 注・・手作り=手織りの布。
    さらす=水に晒して布地を美しくする。
    さらさらに=「さらにさらに」を掛ける。
    ここだ=量の多いこと。はなはだしいこと。

出典・・万葉集・3373。