花の色は 移りけりな いたづらに わが身世にふる 
ながめしまに
                 小野小町

(はなのいろは うつりけりな いたづらに わがみよ
   にふる ながめせしまに)


意味・・花の色も私の美しさも、もはや色あせってしま
    ったのだ。思えば、むなしくも我が身はすっか
    り老い衰えた。つまらない物思いにふけり眺め
    ているうちに、花が春の長雨にうたれて散って
    いくように。

    たださえ開花期間の短い桜の花が、長雨のため
    に散る前に色あせてしまった。そのような桜に
    自分を重ねています。女盛りの美しさを人前で
    十分に発揮することもなく、むなしく老いて行
    く自分自身の人生が、深い哀惜をもって見つめ
    られている。


 注・・花の色=表面は花であるが、裏面に作者の容色
     をさす。
    移り=色あせること。
    いたづら=むなしいさま、つまらないさま。
    ふる=降ると経る、古る(年を取る)を掛ける。
    ながめ=長雨と眺め(物思いにふける)を掛ける。

作者・・小野小町=おののこまち。生没年未詳。六歌仙
    の一人。絶世の美人といわれ各地に小町伝説を
    残す。

出典・・古今和歌集・113、百人一首・9。