*************** 名歌鑑賞 ****************


百薬の 長どうけたる 薬酒 のんでゆらゆら 
ゆらぐ玉の緒     
              唐衣橘洲

(ひゃくやくの ちょうどうけたる くすりざけ のんで
 ゆらゆら ゆらぐたまのお)

意味・・百薬の長といわれる薬の酒を、たっぷり杯に
    受けて飲むと、わが玉の緒の命も、ゆらゆら
    と揺れ動くような、浮き立つ快さを覚える。

    参考です。
    「初春の初子の今日の玉箒手に取るからにゆら
     ぐ玉の緒」の歌と、
    「酒は憂いの玉箒」の諺を念頭に詠んだ歌です。
                           (意味は下記参照)

 注・・百薬の長=酒は百薬の長。「長」は「ちょうど」
     を掛ける。
    ちょうど=たっぷり、十分。
    玉の緒=玉をつらぬいた緒、命。

作者・・唐衣橘洲=からころもきっしゅ。1743~1802。
    田安家の臣。江戸時代の狂歌師。

出典・・小学館「日本古典文学全集・狂歌」。

参考歌です。
初春の 初子の今日の 玉箒 手に取るからに
揺らぐ玉の緒     
              大伴家持

(はつはるの はつねのきょうの たまははぎ てに
 とるからに ゆらぐたまのお)

意味・・新春のめでたい今日、蚕室を掃くために玉箒
    を手に取るだけで、揺れ鳴る玉の緒の音を聞
    くとうきうきした快さが感じられる。

 注・・初子(はつね)=その月最初の子の日の称。
    玉箒(たまははぎ)=古代、正月の初子の日に、
     蚕室を掃く玉飾りのついたほうき。酒の異称、
     憂いを掃くので。
    取るからに=「からに」はわずかな事が原因で
     重大な結果が起こる場合をいう。
    揺らぐ=目に揺れ動くさまが映ると共に耳にも
     その触れあって鳴る音が伝わって来ることを
     意味する動詞。
   玉の緒=玉箒の玉を緒に通して吊るしたものを
    さすが、同時に生命を表す語として、それを
    見る作者の心の躍動緊張をも意味する。

出典・・万葉集・4493。

諺です。
酒は憂いの玉箒 (さけはうれいのたまぼうき)

意味・・酒を飲めば心にかかっている悩み事や心配事も、
    箒で掃き清めたように無くなってしまう、とい
    うこと。