遅き日の つもりて遠き むかしかな    
                      蕪村

(おそきひの つもりてとおき むかしかな)

詞書・・懐旧。

意味・・日の暮れの遅い春の一日、自然と思いは過去に
    向う。昨日もこんな日があり、一昨日もこんな
    日であった。こんな風にして、過去の一日一日
    も過ぎていった。やがて来る残り少ない未来の
    ある一日も、このようにして昔となってゆくだ
    ろう。

    心は遠い昔にはせ、老いの寂しさを詠んだ句です。
    白居易の漢詩、参考です。
    
     「懐旧」   
    往時渺茫として全て夢に似たり 
    旧遊零落して半ば泉に帰す

    おうじ ぼうぼうとして すべてゆめに にたり
    きゅうゆう れいらくして なかば せんにきす

    過ぎ去った昔のことはぼおっとかすんでしまって、
    全てが夢のようだ。かって良き遊び友達の半ばは、
    木の葉が落ちるように欠けていって、半分は泉下
    に帰してしまって嘆かれる。

 注・・つもり=積り、一日一日が積って過去になる。
    渺茫(ぼうぼう)=水の広大なさま。
    旧遊=旧友。
    零落=草木の葉が落ちること。

作者・与謝蕪村=よさぶそん。1716~1783。池大雅と共
   に南宗画の大家。

出典・・おうふう社「蕪村全句集」。