太秦は 竹ばかりなり 夏の月
                  井上士郎

(うずまさは たけばかりなり なつのつき)

意味・・太秦は京都の西郊で、今でも竹藪が多いが、
    当時は人家も少なく、まさしく「竹ばかりな
    り」の感が深かったであろう。
    夏の月明かりの夜、太秦のあたりを遊歩する。
    道は竹藪の間をぬい、一つの竹藪が尽きると、
    また次の竹藪がある。すくすくと伸びた竹、
    その細かい葉が月光をあびて涼しげに輝いて
    いる。

 注・・太秦=京都市右京区の地名。当時は郊外でこ
     こから御室(おむろ)・嵯峨のあたりにかけ
     て竹藪が多かった。

作者・・井上士郎=井上しろう。1742~1812。
    名古屋の町医者。

出典・・小学館「近世俳句・俳文集」。