ありしにも あらで憂き世を わたるかな 名のみ昔の
真間の継橋        
                    藤原良基
               
(ありしにも あらでうきよを わたるかな なのみ
 むかしの ままのつぎはし)

意味・・過ぎた昔と違って、今はつらい人生を渡る
    ことだ。真間の継橋のように、名だけは昔
    のままに継いでいるが。

    昔の摂政関白の良き時代を述壊した歌です。

 注・・ありし=以前の、昔の。
              名=藤原一族の一流の名声。
    真間の継橋=下総国の歌枕。「継橋」は橋
     板を継ぎ渡した橋。真間は「昔のまま」
     を掛ける。

作者・・藤原良基=ふじわらのよしもと。1320~
    1388。北朝の天皇に仕えて摂政関白を長
    期務める。北朝と南朝との戦乱の時代に生
    きる。

出典・・詠百首和歌・97(岩波書店「中世和歌集・
    室町篇」)