わが心 慰めかねつ 更級や 姥捨山に 
照る月を見て
              詠み人知らず

(わがこころ なくさめかねつ さらしなや うばすて
 やまに てるつきみて)

意味・・私の心はついに慰められなかった。更級の
    姥捨山の山上に輝く月を見た時はかえって
    悲しくなった。

    「大和物語」説話によると、信濃国に住む
    男が、親の如く大切にして年来暮らして来
    た老いた伯母を、悪しき妻の誘いに負けて
    山へ捨てて帰るが、家に着いてから山の上
    に出た限りなく美しい月を眺めて痛恨の思
    いに堪えず詠んだ歌、です。

    なお、盲人の塙保己一(はなわほきいち)が姥捨
    て山に来て気持ちを聞かれた時に「わが心慰め
    かねつ更級や姥捨山に照る月を見で」と詠み、
   「見て」を「見で」と「て」を「で」に替えただ
    けでしたが意味は反対にしています。
    

 注・・更級=長野県更級の地。
    姥捨山=更級郡善光寺平にある山。観月の名所。
    塙保己一=はなわほきいち。1746~1821。江戸
     時代の国文学者。

出典・・古今和歌集・878。