秋風の 千江の浦廻の 木屑なす 心は依りぬ
後は知らねど
                詠み人しらず

(あきかぜの ちえのうらみの こつみなす こころは
 よりぬ のちはしらねど)

意味・・秋風の吹く千江の浜辺に、木の屑や貝殻や海藻
    などの小さな塵芥が流れ寄っています。それら
    は波のまにまに打ち寄せられて、いつしか、そ
    の浜辺にたまったもの。私の恋の思いも、ちょ
    うど塵芥のようなもので、あなたに対する慕情
    は、絶え間なく私の心の浜辺に打ち寄せ続け、
    高まり、つのるばかり。でも、この思いがかな
    えられるかどうか、その行く末を知ることは出
    来ないけれど。
    
 注・・秋風の=「吹く」などの述語が省かれている。
    千江の浦廻=所在未詳。「浦廻」は海岸の湾曲
     したところ。
    木屑(こつみ)=木積とも。木の屑。海岸に打ち
     寄せられる諸々の塵。
  
出典・・万葉集・2724。