梟よ 尾花の谷の 月明に 鳴きし昔を
皆とりかへせ
             与謝野晶子

(ふくろうよ おばなのたにの げつめいに なきし
 むかしを みなとりかえせ)

意味・・吹く風に靡(なび)き、月明かりに照らされた
    尾花は風情があるものだ。梟よ、その尾花が
    咲いている谷間で、若くして元気に鳴いてい
    た頃の日々を覚えているかい。お前もそんな
    昔に戻りたいだろうなあ。私も若々しい時に
    戻りいものだ。

    亡くなる前年の秋に、身の衰えを哀しみ元気
    であった頃の昔を回想して詠んだ歌です。

作者・・与謝野晶子=よさのあきこ。1878~1942。
    堺女学校卒。与謝野鉄幹と結婚。「明星」の
    花形となる。

出典・・歌集「白桜集」。