おく露に たわむ枝だに あるものを いかでかをらん
宿の秋萩
                  橘則長

(おくつゆに たわむえだだに あるものを いかでか
 おらん やどのあきはぎ)

詞書・・我が家の萩を人が分けてほしいと請いましたので
    詠んだ歌。

意味・・置く露によって撓(たわ)む枝さえ痛ましく思うの
    に、我が家の秋萩をどうして折れましょうか。
    折れません(差し上げることは出来ませんので、
    あしからず)。

    とは言うものの、人のたっての所望を断り
    おおせず、見事な枝にこの歌をつけて贈っ
    たという。

作者・・橘則長=たちばなののりなが。生没年未詳。越中
    守従五位。清少納言の子供。

出典・・後拾遺和歌集・301。