梓弓 磯辺に立てる ひとつ松 あなつれづれげ
友なしにして
               源実朝

(あずさゆみ いそべにたてる ひとつまつ あな
 つれづれげ ともなしにして)

意味・・磯のほとりに立っている一本松は、何とも
    所在なさそうだ。友もいなくて。

    ぽつねんと手持無沙汰げにしている松に対
    して、自身の寂しい心情から発した共感が
    込められています。

 注・・梓弓=「射る」に掛かる枕詞。ここでは磯
     辺の「い」に掛かる。
    あな=感動を表す語。ああ。
    つれづれ=することが無く手持ちぶさたな
     こと。
    げ=いかにも・・のようである。

作者・・源実朝=みなもとのさねとも。1192~12
    19。28歳。12歳で三代将軍になった。鶴
    岡八幡宮で甥の公卿に暗殺された。

出典・・金槐和歌集・587。