病むもよし病まば見るべし萩芒

                 吉川英治

(やむもよし やまばみるべし はぎすすき)

意味・・時には悩むことも仕方がない。しかし
    悩んだ時には萩や芒の柔軟な姿を見る
    ことだ。

    萩の枝は、箒にされるようにしなやか
    である。また芒は風に吹かれるままに
    靡(なび)く。このように萩や芒の姿の
    柔軟な様は尊いものである。

    悩んでいる時は一方的な考えになって
    いるので、萩や芒のように柔軟な考え
    になれれば悩みも軽減されると言って
    います。

 注・・病む=病気にかかる。悩む、心配する。
    よし=縦し。仕方がない、ままよ。
    萩=豆科の植物。花は豆のような蝶形
     の花。枝や葉は家畜の飼料や屋根ふ
     きの材料にされ、葉を落とした枝は
     束ねて箒(ほうき)にされる。秋の
     七草。 
     
作者・・吉川英治=よしかわえいじ。1892~19
    62。高等小学校中退。工員など転々と
    20余種も職を変える。その後懸賞小説
    に入選し、「鳴門秘帖」で作家の地位
    を確立する。    

出典・・村上護「今朝の一句」。