すがる鳴く 秋の萩原 朝たちて 旅ゆく人を 
いつとか待たむ
                詠み人しらず

意味・・野には萩が一面に咲き乱れ、蜂がぶんぶんと飛び
    交う秋となった。その美しい萩の花を分けて、う
    ちの人は朝立ちの旅に出るのだが、無事に帰って
    くれるのははたしていつのことだろうか。

    きわめて交通が不便であり、また危険が多かった
    昔、旅に出る人を送る時の不安な気持や夫との別
    れを悲しむ女性の気持を詠んだものです。

 注・・すがる=腰の細い小型の蜂の古名。じが蜂。
    人=特定の人を指していう語。あの人。夫。
    いつとか待たむ=いつ帰って来ると私は待つのだ
     ろうか。「いつまで待っても帰るまい」という
     気持も含まれている。

出典・・古今和歌集・399。