秋風や藪も畠も不破の関
                  芭蕉 

(あきかぜや やぶもはたけも ふわのせき)

意味・・来て見れば不破の里には寂しく秋風が吹き
    わたっている。往時を偲んで関跡に立てば、
    眼前の藪や畠に秋風が吹きさわぐばかり。
    伝え聞く不破の関屋はただ風の中に幻を残
    すのみであった。

    関跡の現況を「藪も畠も」と描きだして、
    黍離麦秀(しょりばくしゅう)(亡国の遺跡
    に黍(きび)や麦などの生い茂っているさま)
    の懐古の思いを詠んでいます。

    次の歌を踏まえた句です。
    「人住まぬ不破の関屋の板びさし荒れにし
    のちはただ秋の風」  (意味は下記参照)

 注・・秋風・・ここでは暮秋の秋風。草木を枯ら
     し、万物を凋落させる風を意味し、もの
     侘びしい秋風である。
    不破の関=岐阜県不破郡関が原にあった関。
     逢坂の関が設置されて廃止になり、その
     荒廃の哀歓を詠ずる歌枕となった。

作者・・芭蕉=ばしょう。1644~1694。「野ざらし
     紀行」。

出典・・野ざらし紀行。
 
参考歌です。

人住まぬ 不破の関屋の 板廂 荒れにし後は
ただ秋の風
               藤原良経
           
(ひとすまぬ ふわのせきやの いたびさし あれにし
 のちは ただあきのかぜ)

意味・・もう関守が住まなくなった不破の関の番小屋の
    板廂。荒れ果ててしまったあとは秋風が吹き抜
    けるばかりだ。

    かっては威勢がよかったが、荒廃してしまった
    不破の関のありさまに、人の世の無常と歴史の
    変転をみつめている。
    
 注・・不破の関屋=岐阜県関ヶ原にあった。675年
     に開設、789年に廃止された。「関屋」は
     関の番小屋。

作者・・藤原良経=ふじわらのよしつね。1206年没、
    38歳。従一位摂政太政大臣。「新古今集仮名序」
    を執筆。

出典・・新古今和歌集・1601。