草の庵 なにつゆけしと おもひけん 漏らぬ岩屋も
袖はぬれけり   
                  僧正行尊

(くさのいお なにつゆけしと おもいけん もらぬ
 いわやも そではぬれけり)

意味・・これまで、草の庵ばかりをどうして露に濡
    れると思ったのだろう。雨露の漏らない岩
    屋でも、涙の露で袖は濡れるものだ。

    深山での修行の厳しさによる辛苦を詠んだ
    歌です。
   
 注・・つゆけし=露けし、露がちである。
    漏らぬ岩屋=草葺(くさぶき)のように雨露
     が漏れるはずがない岩屋。

作者・・僧正行尊=そうじょうぎょうそん。1055
    ~1135。天台座主、平等院大僧正。

出典・・金葉和歌集・533。