いつはりの 巧を言うな 誠だに さぐれば歌は
やすからむもの
                橘曙覧

(いつわりの たくみをいうな まことだに さぐれば
 うたは やすからんもの)

意味・・上手な歌を詠もうと思って真情でないことを
    作り出して言ってはいけない。真情をつかん
    だら歌の表現は容易なものなのだから。

    詞書は「短冊箱に歌書きてと乞われて」です。
    三、四句の「誠だにさぐれば歌は」に「たに
    さく(短冊)が読み込まれていて、短冊箱に書
    いておく歌の心得として、歌を詠む時の信念
    が入り、物名も入っているので、詞書きの条
    件が満たされています。
    
 注・・さぐる=探る。たずねもとめる。さがす。
    真情=真心、いつわりのない心。

作者・・橘曙覧=たちばなあけみ。1812~1868。早
    く父母に死に分かれ、家業を異母弟に譲り隠
    棲。福井藩の重臣と親交。

出典・・東京堂出版「和歌鑑賞事典」。