草も木も 靡きし秋の 霜消えて 空しき苔を
払ふ山風
                鴨長明 

(くさもきも なびきしあきの しもきえて むなしき
 こけを はらうやまかぜ)

意味・・草木も靡くほどの権勢を持っていた源頼朝も、
    秋の霜のように消えてしまい、今では墓の苔
    に、むなしく風が吹きぬけてゆく。

    鴨長明が法華堂に詣でた時に、源頼朝を偲ぶ
    一首を、堂の柱に書き記した歌です。

    源頼朝を悼(いた)むと同時に、人の世・人の
    命の無常感を込めた歌です。

 注・・草も木も靡く=威厳があって辺りの者を寄せ
     つけないほどである、威圧する、 の意。
    秋の霜=「秋霜烈日」をいい、権威の厳しさ
     おごそかさをいう。

作者・・鴨長明=かものちょうめい。1155-1216。
    「方丈記」が有名。

出典・・吾妻鏡。

参考です。(鴨長明の方丈記の一節)

    ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水
    にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消
    えかつ結びて、久しくとどまりたるためしな
    し。世の中にある人と栖(すみか)と、またか
    くのごとし。