曇りなき 子の日の影に うち出づる 野辺に心も
揺らく空かな
荒木田守武
(くもりなき ねのひのかげに うちいずる のべに
こころも ゆらくそらかな)
意味・・曇りなく陽の射す初子(はつね)の日、野辺に
出て見ると心もゆったりとし、命も延びるよ
うな気のする空が広がっているとだ。
気持ちの良い初春の野に出た浮き浮きとした
気分であり現代のピクニック気分が詠まれて
います。
注・・子の日=正月の初子の日。ね「子」は十二支
の一番目で鼠。その日に不老長寿を願って
野に出て小松を引き、若菜を摘む行事が行
われる。
子の日の影=子の日に射す日光。
曇りなき=晴れ渡っている事と、御代(天皇
のご治世)が正しく行われている事を暗示。
うち出づる=「うち」は接頭語であるが、広
々とした所へ出る感じがある。
揺らく=玉が触れ合ってゆらゆらとさやかな
音をたてる意だが、ゆったりとしたという
気分や命が延びそうだという気分を表して
いる。
作者・・荒木田守武=あらきだもりたけ。1473~15
49。伊勢神宮宮内神官。連歌を宗祇に師事。
出典・・笠間書院「室町和歌への招待」。
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