思へども ひとのこころの あさぢふに おきまよふ霜の
あへず消ぬべし
                   藤原家隆

(おもえども ひとのこころの あさじうに おきまよう
 しもの あえずけぬべし)

意味・・どんなに愛してもあなたの心は浅い。寂しい枯草
    の原に降りた霜が消えるように、私は耐えきれず
    に死んでしまうのでしょう。

    恋とはどちらか一方が深く愛してしまうもの。そ
    の不足に苦しむうちに、よけい相手を追い詰めて
    しまう。そうなると相手はさらに心が離れてしま
    う。
    かっては確かにあったはずの愛の空間が、今は一
    面の荒れ果てた浅茅が原となり、枯れた草に霜が
    降りて目を覆(おお)いたくなる無惨な景色と化し
    ています。これはまさしく私の心の風景。その霜
    もはかなく消えて行くばかり。私の命もそれと共
    に消えてしまうのは時間の問題なのか・・。

 注・・思へども=恋慕っても、愛しても。
    あさぢふ=浅茅生。丈の低い茅の生えている所。
    「心の浅い」が掛かる。
    おきまよふ=置き場所に迷う。霜などがひどく
     降りる。
    あへず=敢えず。たえきれない、こらえきれない。
    消ぬ=形がなくなる、死ぬ。

作者・・藤原家隆=ふじわらのいえたか。1158~1237。
    従二位宮内卿。新古今和歌集の撰者の一人。

出典・・壬二(みに)集(林和清著「日本の悲しい歌」)