とはれぬは たがためかうき 蓬生の 花よ人めを
待ちつけてみよ
                  小沢蘆庵
              
(とわれぬは たがためかうき よもぎうの はなよ
 ひとめを まちつけてみよ)

意味・・誰にも訪問されないのは一体だれにとってつらい
    ことなのか。ほかならぬ自分がつらいのだ。荒廃
    した我が家に咲く花よ、人の訪れを待ち迎えたら
    どうだ。

    こちらの気持など知りもしないですまして咲いて
    いる花に、自分のようなつらい思いをしてみたら
    どうだと嘆いています。訪れないは誰からも相手
    にされない辛さです。

 注・・たがためかうき=一体誰にとってつらいことなの
     か、ほかならぬ自分がつらいのだ、の意。 
    蓬生(よもぎう)=「蓬生の宿」に同じ。荒廃した
     我が家。

作者・・小沢蘆庵=おざわろあん。1723~1801。和歌の
    指導のみを生業としたため生活は貧しく京を転々
    とした。
 
出典・・六帖詠草(小学館「近世和歌集」)