志賀の浦や とほざかり行く 浪間より こほりて出づる
有明の月
                   藤原家隆

(しがのうらや とおざかりゆく なみまより こおりて
 いずる ありあけのつき)

意味・・志賀の浦は岸辺の方から次第に凍り、遠くに
    見える浪の間から有明の月が氷のようにのぼ
    っていく。

    寒くてたまらない夜更けに外を見ると、月は
    湖面の凍った氷の欠片(かけら)がのぼって行
    くように見える。

 注・・志賀の浦=琵琶湖の西岸、今の大津市あたり。
    有明の月=夜が開けても残っている月。

作者・・藤原家隆=ふじわらのいえたか。1158~12
    37。従二位宮内卿。新古今集の撰者の一人。

出典・・新古今和歌集・639。