酪農を していた頃を 思いつつ 牛舎跡地に 
降る雪を見る
                井上和真

(らくのうを していたころを おもいつつ ぎゅうしゃ
 あとちに ふるゆきをみる)

意味・・家業が酪農経営であった頃、私は手伝って、牛
    を外に出したり、餌をやったり、牛舎の掃除を
    していた。今は廃業となり、牛舎は取り壊され
    ている。今、その跡に雪が降り出した。そして
    昔が懐かしく思い出されて来る。寒い時の作業
    が思い出されて来る。

    どうして「酪農」を止めたのか。不況のためか、
    両親の病気のためか、もしかしたら作者が跡を
    継がなかったためかも知れないが、作者はその
    止めた理由を言っていないのだから、止めた理
    由に感慨があるのではなく、止めたこと自体を
    今思っているのである。

作者・・井上和真=いのうえかずま。`94年当時北海道
    稚内商工高校二年生。

出典・・東洋大学「現代学生百人一首」。