吾妻やまに 雪かがやけば みちのくの 我が母の国に
汽車入りにけり
                   斎藤茂吉

(あづまやまに ゆきかがやけば みちのくの わが
 ははのくにに きしゃいりにけり)

意味・・国境の吾妻山に残雪が白々と輝き、わが汽車は
    いよいよ母の病むふるさとに入ったことだ。

    「死にたまふ母」の題で詠まれた歌です。
    残雪を輝やかしながらまともに迫る山膚(はだ)、
    ああ、汽車はもうふるさとの土の上を走ってい
    るのだ。こう思った時の引き締まるような緊張
    感が一首を貫いています。特に「我が母の国に
    入りにけり」という厳しい調べは、いよいよ重
    態の母にま向かわねばならないという思いを伝
    えています。

 注・・吾妻やま=吾妻山。福島・山形の県境にある山
     で2024m。
    雪かがやけば=残雪が輝き。
    我が母の国=母が病んでいるふるさと。

作者・・斎藤茂吉=さいとうもきち。1882~1953。東大
    医科卒。精神病医。伊藤佐千夫に師事。

出典・・歌集「赤光」(学灯社「現代短歌評釈」)