あしびきの 山川の瀬の 鳴るなへに 弓月が岳に
雲立ちわたる 
                                       柿本人麻呂

(あしびきの やまがわのせの なるなえに ゆつき
 がだけに くもたちわたる)

意味・・山川の激しい瀬音が高まってくるにつれて、
    弓月が岳にもくもくと雲が湧き上がって来
    る。

    暗雲たれこめた自然の力強い風景と川の激
    しい音量は、作者の逞(たくま)しく強い意
    志力、精神力を暗示しています。

 注・・あしびきの=「山」の枕詞。
    なへに=前後に述べた事態が同時に進行す
     る意。・・とともに、・・につれて。
    弓月が岳=奈良県桜井市巻向山の最高峰。

作者・・柿本人麻呂=生没年未詳。710年頃活躍し
    た宮廷歌人。

出典・・万葉集・1088。