童わが 茅花ぬきてし 墓どころ その草丘に 
吾子はねむらむ
                明石海人

(わらわわが つばなぬきてし はかどころ そのくさ
 おかに あがこねむらん)

意味・・私が小さな子供の頃にはこの墓のある丘でよく
    茅花の穂を抜いて遊んでいたものだ。この草の
    生えている丘には、果かなく死んだ我が子が眠
    っているのだ。冥福を祈っている。

    幼い次女の墓参りに行った時の歌です。作者が
    幼い時はこの墓の近くで茅花の穂で遊んでいた
    のだか、その年頃の次女は今はもう墓に眠って
    いる。まだまだ長生きして欲しかった・・。

 注・・茅花(つばな)=茅萱(ちがや)。初夏、白い毛を
     密生した花を咲かせる。若い花穂を「茅花」
     と呼ぶ。ススキに似ている。

作者・・明石海人=1901~1939。ハンセン病を患い岡
    山県の愛生園で療養生活を送る。手指の欠損、
    失明、喉に吸気管を付けた状態で歌集「白描」
    を出版。

出典・・歌集「白描」。