名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

カテゴリ: 日記


 草の原 涼しき風や わたるらん 夕露またぬ 
虫のこえごえ
                心敬
            
(くさのはら すずしきかぜや わたるらん ゆうづゆ
 またぬ むしのこえごえ)

意味・・草原を夕方の涼しい風が吹き渡っているから
    だろうか。夕露を待ちきれず鳴き出した虫の
    声々が聞える。
 
    夕べを待ちきれず鳴き出した虫の声に、季節
    の変化を感じています。

 夕露=はかない命を暗示。虫も短い命を力いっぱい
  鳴いていることも暗示している。

心敬=しんけい。1406~1475。権大僧都。

出典・・寛正百首(岩波書店「中世和歌集・室町篇」)


 ありしにも あらで憂き世を わたるかな 名のみ昔の
真間の継橋        
                    藤原良基
               
(ありしにも あらでうきよを わたるかな なのみ
 むかしの ままのつぎはし)

意味・・過ぎた昔と違って、今はつらい人生を渡る
    ことだ。真間の継橋のように、名だけは昔
    のままに継いでいるが。

    昔の摂政関白の良き時代を述壊した歌です。

 注・・ありし=以前の、昔の。
              名=藤原一族の一流の名声。
    真間の継橋=下総国の歌枕。「継橋」は橋
     板を継ぎ渡した橋。真間は「昔のまま」
     を掛ける。

作者・・藤原良基=ふじわらのよしもと。1320~
    1388。北朝の天皇に仕えて摂政関白を長
    期務める。北朝と南朝との戦乱の時代に生
    きる。

出典・・詠百首和歌・97(岩波書店「中世和歌集・
    室町篇」)  
  


秋の夜の あはれはたれも しる物を われのみとなく
きりぎりすかな
                  藤原兼宗
            
(あきのよの あわれはたれも しるものを われのみ
 となく きりぎりすかな)

意味・・秋の夜の哀れさは誰も知るところなのに、私だ
    けが哀れと鳴く蟋蟀(こおろぎ)よ。

 注・・あはれ=しみじみとした趣、悲しさ、寂しさ。
    われのみとなく=自分だけが哀れを知るかのよ
     うに鳴く。
    きりぎりす=現在のこおろぎ。

作者・・藤原兼宗=ふじわらのかねむね。1163~1242。
    正二位大納言。

出典・・千載和歌集・329。
 


 かくのみに ありけるものを 萩の花 咲きてありやと
問ひし君はも
                  舎人余明軍

(かくのみに ありけるものをはぎのはな さきて
 ありやと といしきみはも)

詞書・・大納言大伴旅人がお亡くなりになった時の歌。

意味・・今思えば、このように死の床にあったものを、
    萩の花はもう咲いたかとお尋ねになった君は
    今はもういない・・ああ。

 注・・かくのみに=所詮は死の床になることでしか
     なかったのに、の意。
    はも=眼前に存在しないものを思いやる詠嘆。

作者・・舎人余明軍=とねりよのみょうぐん。百済系
    の人物。舎人は天皇・皇族などのそばに仕え
    て雑事をする人。

出典・・万葉集・455。


昨日まで 何ともきかぬ 荻のはに けふよりかなし
秋の初かぜ
                 木下長瀟子

(きのうまで なんともきかぬ おぎのはに きょう
 よりかなし あきのはつかぜ)

意味・・昨日まで何とも特別な思いを抱かずに聞いた
    荻の葉の音だが、秋の初風が吹いて音を立て
    る今日からは哀愁が感じられる。

 注・・荻=イネ科の多年草。水辺や原野に秋に穂を
     出す。ススキによく似ている。
    秋の初風=夏の名残が消えないものの、明ら
     かに秋の風情を感じさせる風。

作者・・木下長瀟子=きのしたちようしょうし。1569
    ~1649。秀吉の近臣として厚遇された。若狭
    小浜の城主。

出典・・小学館「近世和歌集」。 

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